外国籍の子供 実態把握し就学機会の確保を
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日本に住みながら、就学の機会を得られない。そんな外国籍の子供たちの実態を把握し、対策を講じる必要がある。
文部科学省は、小中学校に通っていない可能性のある外国籍の子が約2万人いるとの調査結果を発表した。住民登録のある約12万4000人の16%に当たる。このうち、不就学が確実な子供は1000人だった。
2万人の中には、外国人学校に通う子が含まれているとみられるが、家庭訪問や電話をしても就学状況が確かめられない場合があるという。心配な状況である。
外国籍の子供は義務教育の対象外だ。ただ、国際人権規約に基づき、保護者が希望すれば、公立小中学校で受け入れてきた。文科省は外国人労働者の受け入れ拡大を機に、初めて調査をしたが、遅きに失した感が拭えない。
文科省に回答した自治体の中には、「人数を把握できていない」と答えた政令市が複数あった。子供たちの国籍別の集計もしておらず、調査内容は不十分と言わざるを得ない。文科省は改めて現状を調べ直してもらいたい。
外国籍の子供に対する取り組みでは、自治体間の差が大きい。
外国人労働者の多い浜松市は、市に引っ越してきたものの、学校に通っていない子供を持つ家庭の個別訪問を積極的に重ねる。
一方、横浜市は、外国人の保護者には子供を日本の学校に通わせる義務がない、といった理由から確認をしてこなかったという。
自治体の37%は、外国籍の子供がいる家庭に、小学校や中学校に入学するための案内を送っていない。義務教育年齢の子供を登録する「学齢簿」に準じるものを作成する自治体は半数に満たない。
文科省が対応を自治体任せにしてきたことが、こうした状況を招いたのではないか。先進事例を自治体間で共有できるようにし、積極的な取り組みを促すべきだ。
その際に重要なのは、日本語の教育である。就学できても、言葉が分からなければ、授業についていけない。外国籍の子供に日本語を教えられる人材の育成や確保に努めることが求められる。
日本語の不得意な外国籍の高校生は中退率が高く、大学への進学率が低いというデータもある。
学校に通わなくなった外国籍の子供たちが、社会にうまく溶け込めず、周囲とあつれきを生じるようなことがあってはなるまい。地域や外国人を雇う企業も、子供の教育に目を配り、日本社会の一員として育てる姿勢が大切だ。