即位の礼恩赦 時代に即したあり方の検討を

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 司法で確定した刑罰の内容や効力を、行政が変更する。こうした恩赦の性質を踏まえ、慎重に判断したのだろう。

 天皇陛下の即位に伴う22日の即位礼正殿の儀に合わせ、政府が恩赦を実施することを決めた。皇室の慶弔事に伴う恩赦は、皇太子だった天皇陛下のご結婚以来、26年ぶりだ。

 今回は政令で刑の種類を定め、一律に救済する「政令恩赦」を実施する。対象は、罰金刑の執行が終了してから3年以上経過した人だ。スピード違反や交通事故を起こした人が大半を占め、公職選挙法違反の人も含まれる。

 過去の政令恩赦と比較して、対象者を大幅に絞り込んだのが特徴だ。昭和天皇大喪の礼の際は、約1000万人が対象だったが、今回は55万人にとどまる。

 犯罪被害者の心情に配慮して、悪質な重大事件ではなく、比較的軽微な事件で罰金刑を受けた人を対象にしたのは理解できる。

 有罪判決を失効させる大赦や刑を軽くする減刑は行われない。有罪の言い渡しを受けたために喪失、停止されていた資格を回復する「復権」のみ実施される。

 例えば、罰金刑の執行後は5年間、医師や看護師などになる資格が制限されるが、復権により免許の取得が可能になる。

 職場復帰が早まれば、経済的な自立につながる。罪を犯した人の更生や再犯防止を後押しする刑事政策的な意義は小さくない。

 恩赦は、古くは奈良時代から国家の慶弔事に行われたとされ、明治憲法下では天皇の大権による行為と規定されていた。戦後、内閣が恩赦の内容を決定し、天皇が認証する形になった。

 時代に合わなくなった法律で過去に罰せられた人を一斉に救済するなど、恩赦が一定の役割を果たしてきたことは確かだ。

 ただ、今回のような政令恩赦では、国家の慶弔事に偶然、行き当たった人が救済されるという不公平感が拭えない。いつ誰を対象に実施するのか、決定のプロセスが見えにくいという問題もある。

 政府の一存で選挙違反者の公民権を回復させることに対し、「政治恩赦」との批判は絶えない。

 慶弔事の政令恩赦とは別に、本人の申し出に基づき、審査機関が個別に判断する「常時恩赦」の制度があり、年数十件程度認められている。恩赦を抑制的に実施すべきとの観点から、常時恩赦だけで十分だといった意見もある。

 時代に即した恩赦のあり方を一度、考えてみてはどうか。

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852800 0 社説 2019/10/19 05:00:00 2019/10/19 05:00:00

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