裁判記録廃棄 史料価値への認識が低すぎる

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 社会に大きな影響を与えた重要裁判の記録は、国民全体の貴重な財産である。保存と活用のあり方を検討すべきだ。

 憲法上の重要な判断などが示された民事裁判の記録の多くが、全国の裁判所で廃棄されていたことが最高裁の調査で明らかになった。著名な134件のうち9割近くが処分されたという。

 裁判の傍聴者が法廷でメモを取ることが認められた訴訟や、海外在住の日本人の選挙権を制限した公職選挙法が違憲と判断された訴訟が含まれている。生活保護の基準を巡る訴訟で、後に福祉訴訟の原点と評価されたものもある。

 いずれも、国民の権利に深くかかわる裁判と言える。廃棄により、歴史的な検証作業がほぼ不可能になったことは深刻だ。

 処分されたのは、判決文以外の裁判記録だ。訴状のほか、原告・被告双方の主張や法廷でのやりとりを記した書面など多岐にわたる。判決文だけでは分からない裁判の詳しい経緯を把握できる。

 裁判所には、こうした記録に高い史料価値があるという認識が欠けていたのではないか。

 通常の民事裁判では、裁判終結後、1審の裁判所が記録を5年間保存するように最高裁の規定で定められている。重要な憲法判断が示された裁判など歴史的価値のある記録については、永久保存の対象とすることになっている。

 ただ、具体的にどの記録を永久保存にするかは、各裁判所の判断に委ねられていた。記録の価値の判断が的確にできず、廃棄していた例も多いようだ。

 欧米では裁判記録の保存の判断にあたり、歴史や文化に詳しい専門家がかかわるシステムがある。最高裁はこれらも参考に、保存の仕組みを検討する必要がある。

 刑事裁判記録も課題は多い。

 判決確定後の記録は一定期間、検察庁に保管した後、原則廃棄される。著名事件など約700件が「刑事参考記録」として永久保存されているが、記録の閲覧・利用には厳しい制限がある。

 元被告や被害者のプライバシー保護の観点から、公開には配慮が必要だが、参考記録の事件名さえ公表しないのは理解に苦しむ。

 昨年、当時の上川陽子法相はオウム真理教による一連の事件の刑事裁判や死刑執行に関する記録を永久保存し、後世の犯罪研究に役立たせる方針を公表した。

 100年先を見据え、貴重な史料を残す。同時に、個々の事情に配慮しつつ、適切な時期に公表することが大切である。

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879942 0 社説 2019/11/04 05:00:00 2019/11/04 05:00:00

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