「壁」崩壊30年 岐路に立つ東欧の民主主義

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 冷戦終結でもたらされた自由や民主主義などの価値観を国民が共有していけるのか。東欧諸国が抱える課題である。

 東西冷戦期に自由主義体制と共産主義体制を隔てた「ベルリンの壁」の崩壊から30年を迎えた。ソ連の衛星国だった東欧諸国で民主化運動が拡大し、共産党独裁体制が次々と倒れた「東欧革命」のクライマックスだった。

 東欧各国で民主的な選挙が実施され、市民は言論や移動などの自由を享受できるようになった。西側の市場経済が導入され、経済のグローバル化が加速した。非人道的な独裁を打倒した意義は今日も失われていない。

 懸念されるのは、民主化に逆行する動きが近年、東欧で顕在化してきたことだ。

 ポーランドやハンガリーの政権はメディアの活動制限や司法への介入を試みて、欧州連合(EU)から制裁の警告を受けている。

 ハンガリーのオルバン首相は、リーマン・ショック後の景気回復を牽引けんいんした中国を評価し、米欧の自由主義に否定的な見方を示す。厳しい国際競争を生き残るには、強力な指導力と国民の一体性が必要だと判断しているのだろう。

 国や民族を中心とする考えは、冷戦終結によって共産党支配から解き放たれた。だが、東欧諸国はあえて前面には出さず、欧州統合を推進するEUへの加盟を目指した。豊かな西欧諸国との自由貿易による実利を優先したからだ。

 EU加盟を果たし、一定の経済成長と国力増大を達成したことで、民族主義が広がる機運が生まれたのではないか。

 EUが欧州の財政・金融危機への対処などでもたつき、求心力を低下させたことも、東欧が独自路線を強めた一因だろう。

 中東・北アフリカからの難民大量流入では、EUの難民受け入れの割り当てに東欧諸国が反発し、イスラム系難民を排除する国民感情に火がついた。ハンガリーなどでは、政治指導者がキリスト教に根ざす文化や伝統を強調する。

 ドイツの旧東独地域では、反移民・難民色が強く、EUに懐疑的な新興政党が、2大政党に比肩する勢力として定着した。「2級市民」扱いされたという地域住民の不満の受け皿になった。

 旧西独地域では、欧州統合推進派の緑の党が支持を伸ばす。

 EUを主導する経済大国ドイツが抱える「東西問題」だ。ドイツ政治の特徴だった安定性がこれからも維持されるのか。注意深く見守る必要があろう。

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889449 0 社説 2019/11/09 05:00:00 2019/11/09 05:00:00

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