歴史的資料 災害から守り後世に伝えたい

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 地域の歩みや伝統を伝える貴重な資料を自然災害から守り、後世に伝えていきたい。

 台風19号がもたらした水害で各地の博物館や図書館が浸水して、歴史的な資料や書籍などに大きな被害が出た。

 川崎市では、多摩川沿いにある市民ミュージアムの地下収蔵庫9室全てが浸水した。所蔵していた地域の古文書など、約26万点の多くが水につかった。漫画家の手塚治虫や、フランスの画家ロートレックの作品も含まれる。

 1988年に開館したミュージアムは、2000年代に入って市が作成したハザードマップで浸水想定地域とされた。しかし、収蔵庫を上階に移すなどの対策は取られていなかった。

 川崎市は今後、保管体制を見直すとしているが、遅きに失した感は否めない。他の地域でも今回の教訓を踏まえ、水害から大事な収蔵物をどう守るか、防災体制を再点検しておくべきだ。

 水につかった文書も、泥や水分を丁寧に取り除き、十分に乾燥させれば修復できる可能性がある。すぐに対応できない場合には、冷凍保存すれば、劣化やカビの発生を食い止められるという。

 民家に残る古文書などにも歴史的に貴重な資料はある。詳しく調べれば、地域の成り立ちや生活、風俗を解明する手がかりとなるのに、被災後にゴミとして捨てられてしまうケースは少なくない。

 こうした事態を防ぐため、各地に設けられたのが、研究者や学芸員らで作る歴史資料ネットワークだ。1995年の阪神大震災後、兵庫県で初めて設立された。

 2016年の熊本地震では、熊本大学が中心となって組織したネットワークなどが、被災地から4万点近くを回収した。中には歴史的価値が評価され、文化財指定を検討している例もある。

 今回の水害でも、各地のネットワークがSNSなどで、安易に捨てないよう呼びかけている。廃棄された古いふすまに貼られていた古文書が「救出」されるなど、成果も出ている。専門家の指導のもと、保全の動きを広げたい。

 災害で貴重な資料が失われるのを防ぐには、平時からの備えが欠かせない。特に、地域の歴史的資料がどこにあるのか、自治体などが把握しておくことが大切だ。

 無論、災害時は人命救助や生活再建が最優先である。とはいえ、混乱の中、多くの資料が歴史的な価値を知られないまま捨てられるのは惜しい。地域に眠る資料の価値を見直す機会にしてほしい。

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902900 0 社説 2019/11/17 05:00:00 2019/11/17 05:00:00

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