量子計算機 技術開発にどう参戦するか

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 将来的に、社会の姿を一変させる可能性を秘めた技術と言えよう。

 米グーグルなどの研究チームが開発した量子コンピューターが、最先端のスーパーコンピューターをはるかに超える性能を示したという。

 スパコンで1万年かかる特殊な計算を、3分20秒でこなした。まだ開発の初期段階とはいえ、注目される成果である。

 量子計算は、電子や原子など、極微の粒子が持つ特殊な性質を使う。既存のコンピューターが一つずつ進める計算を一括して行うため、速度が飛躍的に高まる。

 実用化されると、薬に含まれる原子や分子と、体内の組織や物質との複雑な反応を、高速でシミュレーションできるようになり、新薬の開発につながる。

 超高性能の充電池への活用や、大量の貨物を最小のエネルギーと最短の時間で運ぶ経路を割り出す計算も可能になるとされる。

 既存のスパコンと組み合わせれば、研究の幅は広がろう。

 ただ、量子計算機の開発により、インターネット通信の安全性を守る現在の暗号が、簡単に解読されるのではないかとの懸念がある。今後は、こうした事態も想定し、暗号技術の研究など対策を講じることが求められる。

 今回の開発は、グーグルがほぼ独力で成し遂げた。量子計算機の研究には高い技術力が必要だが、グーグルは巨大な資金力を背景に、優秀な人材を確保し、研究環境を整えたようだ。

 この分野は、特に米中で開発競争が盛んだ。IBMやアリババなどの大企業に加え、大学発の新興企業もしのぎを削っている。

 各国の支援も手厚い。米国は5年間で約1400億円を投資する。中国でも約1200億円をかけて研究所を整備している。

 これに比べて、日本の見劣りは否めない。NECが20年前に基本回路を作成するなど、世界に先駆ける成果を出したものの、現在は存在感が乏しい。政府の年間関連予算も70億円程度にとどまる。

 高度で複雑化した技術の開発では、複数の企業や大学が連携し、それぞれの得意技を持ち寄って研究を進める「オープンイノベーション」が不可欠になる。

 現にIBMは、量子計算機を約80の国内外の企業や研究機関、15万人の利用者に使ってもらいながら開発している。

 政府は、年内にも「量子技術イノベーション戦略」をまとめる。海外との協力も選択肢に入れながら、開発の戦略を描きたい。

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913849 0 社説 2019/11/23 05:00:00 2019/11/23 05:00:00

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