川崎ヘイト条例 表現の自由萎縮させぬ運用を

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 差別をあおり立てる言動は許されないが、表現活動を不当に制約することがあってはなるまい。

 公共の場所でのヘイトスピーチ(憎悪表現)を禁じ、違反者への刑事罰を盛り込んだ川崎市の人権条例が市議会で可決・成立した。来年7月に全面施行される。罰則付きの条例は全国初という。

 特定の国や地域の出身者らに対し、拡声機を使って差別的言動を行うことなどを禁じる。市長がやめるよう勧告、命令しても従わない場合、個人や団体名を公表し、刑事告発する。裁判で有罪になれば、50万円以下の罰金を科す。

 国として差別解消の理念を掲げたヘイトスピーチ対策法が、2016年に施行された。街頭でのデモの件数は減ったが、根絶には至っていない。外国人が多く住む川崎市では、これまで激しいヘイトデモが繰り返されてきた。

 市は、デモが行われる恐れがある場合、公的施設の利用を事前に制限できる指針も設けている。指針に加えて罰則付きの条例を定めることで、ヘイトスピーチの抑止効果を狙ったのだろう。

 国の対策法は憲法が保障する「表現の自由」に配慮し、罰則が盛り込まれていない。合法と違法の線引きは難しく、恣意しい的な運用を招く恐れがあるためだ。

 川崎市の条例では、ヘイトスピーチをやめさせる勧告や命令にあたり、市長が学識経験者で構成する審査会の意見を聞く仕組みを設けた。裁判を経なければ罰則は科されない。手続きに慎重を期したことがうかがえる。

 ただ、審査会のメンバーは市長が委嘱する。市長の政治的立場によって人選に偏りが出たり、判断が左右されたりするようなことがないか気がかりだ。

 表現に問題があるかどうかを公権力が判断する以上、具体的にどのような言動が処罰対象になるのかを、分かりやすく示す必要がある。審査の過程を透明化することが欠かせない。

 正当な表現活動までしゅくさせてしまうことのないよう、適正な運用に努めてもらいたい。

 匿名性が高いインターネット上の書き込みへの対応も課題だ。

 16年にヘイトスピーチ抑止条例を施行した大阪市では、審査対象の半数以上がネット上の動画や書き込みだという。ヘイトと認定した動画などについて、市はプロバイダーに削除を要請している。

 ネット上から悪意と偏見に満ちた表現をどのようになくしていくか、議論を深めねばならない。

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950274 0 社説 2019/12/14 05:00:00 2019/12/14 05:00:00

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