完了しました
中国の香港への圧力が台湾の反中感情を呼び起こし、中国に批判的な蔡英文政権の追い風となっている。民意を尊重しない中国の手法が自らに不利な情勢を招いたと言えよう。
台湾の最高指導者を決める総統選が告示された。来年1月11日に投開票される。再選を目指す民進党の蔡英文総統が、最大野党・国民党の韓国瑜・高雄市長を支持率で大きくリードしている。
蔡氏は、4年前の選挙では台湾独立を目指す党の原則を封印し、独立でも統一でもない「現状維持」を訴える穏健な主張に徹した。今回は、「北京の圧力に屈すれば台湾は消えてなくなる」と、中国批判のトーンを強めている。
中国が「一国二制度」を適用している香港では、激しい反中デモが続く。中国が同じ制度での統一をもくろむ台湾でも、若者を中心に中国への反発が高まった。
対中強硬姿勢が有権者により受け入れられやすくなった、と蔡氏は考えているのだろう。
夏頃まで蔡氏と支持率で
米国の対中制裁の影響を避けるため、中国に進出した台湾企業の間で台湾に戻る動きが出ていることも、韓氏には不利な材料だ。
選挙戦で対中関係に注目が集まるのは当然だが、蔡政権1期目の評価や、具体的な政策に関しても議論を深めてもらいたい。
中国への依存度が高い経済を、中台対話が途絶えた状態でどう発展させるのか。原子力発電から再生可能エネルギーに転換し、電力の安定供給を図るという蔡氏の政策も実現可能性が問われよう。
中国は選挙戦への干渉を行うべきではない。1996年の総統選では、直前に台湾近海でミサイル演習を行い、緊張を高めた。先月には、中国初の国産空母が台湾海峡を通過した。インターネットを通じた世論工作も指摘される。
威圧を強めれば、台湾の民意は一層遠ざかっていくことを、中国は自覚すべきだ。
トランプ米政権は、蔡政権を支持すると明言している。今夏にはF16戦闘機の台湾への売却を決定した。台湾を巡っても、米中対立が激化するのは避けられまい。
台湾の安定と発展は、日本や周辺国にとって極めて重要だ。日本は、選挙結果と次期政権の政策が東アジア情勢に与える影響について注視する必要がある。