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日本酒は産地ごとに様々な香りや風味が楽しめる。個性豊かな日本の文化として、世界に広げていきたい。
自民・公明両党の2020年度の与党税制改正大綱に、輸出を専門に行う日本酒の製造場の新設を認める規制緩和が盛り込まれた。輸出用であれば、生産量が少なくても製造できるよう、政府は酒税法の改正も行う。
日本酒は国内市場が低迷し、需給調整の観点から、新規事業者の製造免許を認めていない。一方、海外で日本酒の人気が高まり、ベンチャー企業などから新規参入を望む声が上がっている。
規制緩和により、事業者が個性的な日本酒を生み出し、販売方法に工夫を凝らせば、輸出拡大に弾みがつくのではないか。
和食ブームが追い風となり、日本酒の年間輸出額は18年に初めて200億円を突破した。輸出量は約2万6000キロ・リットルで、5年前に比べて6割増えた。
とはいえ、白ワインの変種と見なされるなど、海外で広く受け入れられているとは言い難い。
稲作が盛んな日本では、豊かな自然の中で良質な水に恵まれ、古くから酒造りが営まれてきた。各地の酒造元は、伝統の味を守りつつ、品質を磨き上げた。
こうした日本酒の歴史や魅力を、ワインのソムリエのように伝える人がいれば、海外での普及を後押しするに違いない。
政府は、輸出する日本酒に貼るラベルの参考案を公表した。味や産地のほか、飲むのに適した温度、相性のいい料理などを記載してもらう。海外の消費者の理解を助ける狙いはうなずける。
日本と欧州連合の経済連携協定には、ワインや日本酒などの産地を正しく表示する規定がある。偽物の流通を防ぎ、ブランド価値を守る取り組みが重要である。
輸出された日本酒が、海外から新たな観光客を呼び込む効果も期待される。酒蔵を巡るツアーなど、日本酒に魅せられた外国人が楽しめる企画を工夫したい。
気がかりなのは、日本人自身の日本酒離れである。とりわけ若者が飲まなくなっている。
新潟大学には日本酒を研究するセンターが設立され、「料亭・花街の文化」「きき酒の理論」といったテーマで講義が行われている。日本酒の価値を再認識してもらう試みとして注目される。
年末年始に帰省する人は多いだろう。家族や友人と語らいながら、故郷で育まれてきたお酒を味わってみてはどうか。