変動する世界 米国の復元力が問われている

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◆北朝鮮の軍事挑発に警戒強めよ◆

 米国はどこへ進んでいくのか。11月の大統領選を世界が注視する。

 自国第一主義を掲げ、予測不能で衝動的な政治スタイルをとるトランプ米大統領に審判が下される。

 米国の軍事力と経済力を柱とする国際秩序が揺らぎ、同盟や多国間協調の地盤沈下が目立つ。米中対立の着地点は見えない。世界情勢は不透明さを増した。

 ◆核の脅威は目前にある

 トランプ氏は再選を最優先し、支持者にアピールできる「成果」作りに走る。外交政策もその観点から進められ、各国が振り回されるのは避けられまい。

 警戒しなければならないのは、北朝鮮が混乱に乗じて軍事挑発を重ね、制裁解除などの譲歩を引き出そうとすることだ。

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は昨年末の党中央委員会総会で「新たな戦略兵器」を保有すると威嚇した。核兵器の製造や使用、核実験を行わない、という従来の立場を転換する恐れがある。

 2018年の米朝首脳会談を機に、北朝鮮は核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を自制したが、核の脅威が低下したわけではない。

 金委員長が核放棄に踏み出すまで、制裁体制を維持することが肝要だ。1994年の米朝枠組み合意や、2005年の6か国協議共同声明など、過去の非核化合意が北朝鮮の背信で崩れた歴史を忘れてはならない。

 国際社会が結束し、北朝鮮に軍事挑発の自制を求める必要がある。何より、米朝両国が実務者協議を通じて非核化の具体策を積み上げていく努力が欠かせない。

 ◆多国間主義は譲れない

 民主主義、法の支配、自由貿易を世界に広げ、繁栄を共有する。第2次世界大戦後に米国が推し進めてきたこの価値観が、トランプ氏のもとで揺らいでいる。

 トランプ氏の視点はこうだ。中国は多国間の枠組みを悪用し、米国は損をした。米国の利益追求には、2国間交渉で有利な取り決めを結び直す方がよい。米軍の海外駐留や紛争への介入は、コストに見合わないので大幅に見直す。

 確かに、中国に民主主義と公正な貿易を広めようとした米歴代政権の働きかけは奏功しなかった。アフガニスタンや中東での対テロ戦争に国民は疲弊している。

 トランプ氏が型破りな言動を続けても一定の支持を保っているのは、こうした事情があろう。

 米国に限らず、政府や国民が自国の利益を最優先に考えるのは当然だ。だが、国際協調は必ずしも国益と相反するものではない。

 ルールに基づく貿易体制や地球温暖化対策、テロ防止策を多国間で推進することは、すべての国の国益増大につながる。

 同盟を通じた地域の安定は米国の利益でもある。トランプ氏が同盟国に一方的な負担増を求め、日米、米韓同盟や北大西洋条約機構(NATO)を傷つけている現状は看過できない。

 米国は歴史的に、国際問題への積極介入と孤立主義的政策を繰り返してきた。第2次大戦や国連創設で先頭に立ち、ベトナム戦争では痛手を負って内向きになった。冷戦終結と湾岸戦争で、再び圧倒的な存在感を見せた。

 様々な人種が集う国民の多様性と、技術革新に果敢に挑む開拓者精神は他国にない強みだ。

 世界が変動期にある今こそ米国の復元力が問われている。トランプ氏の主張が幅広く浸透し、国民全体が国際協調に背を向ければ、軌道修正はより困難になり、より多くの時間を要するだろう。

 米露の核軍縮の枠組みは中国の軍拡に対応できず、崩壊の危機にある。時代の変化に見合った新たな軍縮体制の構築が必要だ。

 ◆新たな軍縮体制構築を

 今年開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議も焦点だ。非核保有国が核軍縮の停滞に反発し、核保有国との対立が激化する可能性がある。決裂の場合、NPTの信頼性はさらに低下する。

 まずは、米露が核軍拡競争を回避し、信頼醸成と軍縮交渉に取り組むことが重要だ。その上で、中国を加えた3か国による軍縮体制を模索しなければならない。

 軍事技術の進展は著しい。陸海空に宇宙、サイバー空間を加えた複数の領域で同時に作戦を行う構想が具体化している。人工知能(AI)を駆使したAI兵器や軍事用無人機の開発も進む。

 兵器の高度化や複雑化に現行の規制は追いついていない。攻撃と反撃の応酬が想定を超えてエスカレートする事態が懸念される。国際ルールの策定は急務である。

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981006 0 社説 2020/01/03 05:00:00 2020/01/03 05:00:00

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