社会保障と財政 制度の安心と信頼を取り戻せ

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 ◆「人生100年時代」を豊かなものに◆

 日本経済は「緩やかな回復」が続き、雇用も安定している。しかし、多くの人は将来への不安を払拭ふっしょくできないでいる。豊かな日本を維持していくには、社会保障と財政の安定化が欠かせない。

 2012年12月に始まった景気拡大局面は、戦後最長になったとみられる。その間に、家計の実感に近いとされる名目国内総生産(GDP)は、50兆円増えた。

 ◆続く消費者の節約志向

 それでも、消費者の節約志向は根強く、個人消費は力強さを欠いている。消費者心理を示す経済指標は低迷が続く。物価も伸び悩み、デフレ脱却は道半ばだ。家計の貯蓄は積み上がり、保有する現・預金は1000兆円近くに上る。

 先行きへの不安を取り除く政策対応が急務である。

 最大の不安は年金、医療、介護など社会保障制度の行方だ。国の20年度当初予算案で社会保障費は35兆円を超え過去最高となった。20年前の2倍だ。22年以降は団塊世代が75歳以上になり、増加に拍車がかかると見込まれる。

 社会保障の国民負担は年々重くなる。それに少子化が追い打ちをかける。国の推計で、19年の出生数は初めて90万人を割った。15~64歳の生産年齢人口は、15年の約7700万人から50年後に約4500万人に減るという。

 社会保障制度は、高齢者の暮らしを現役世代が支える仕組みだ。今は1人の高齢者を2~3人の現役世代が担う「騎馬戦型」だが、将来はほぼ1人で支える「肩車型」になるとされる。国民が持続性に疑問を抱くのは無理もない。

 ◆改革の実効性問われる

 政府の全世代型社会保障検討会議がまとめた中間報告は、「支え手」を増やす施策に力点を置く。厚生年金の適用対象を広げてパート労働者らの加入を増やす。70歳までの就業機会の確保も促す。

 医療制度改革では、高齢者の負担増も盛り込んだ。75歳以上の人が支払う窓口負担を、現状の原則1割から一定以上の所得がある人は2割にする方向性を示した。

 ただ、所得の線引きなど肝心な部分はこれからだ。実効性のある具体策が求められる。

 誰もが安く医療を受けられる国民皆保険と老後の安心を支える年金制度は、社会保障の根幹だ。

 次代に引き継ぐために、国民にどの程度の痛みを覚悟してもらう必要があるのか。低所得者や高齢者にも配慮し、政府は丁寧な制度設計に努めねばならない。

 社会保障の裏付けとなる国の財政立て直しも重要である。

 国と地方の長期債務残高は約1100兆円と、GDPの約2倍に達する。主要国で最悪だ。

 財政が悪化すれば本来、国債の信用が下がり、長期金利上昇という市場の「警告」が発せられる。ギリシャに端を発した欧州債務危機では、南欧諸国の国債が売られ、長期金利が急上昇した。

 だが、日本では日銀が異次元緩和で大量の国債を購入しているため、警告機能がマヒしている。

 国債などを買い続けた結果、日銀の総資産はGDPを上回る規模になった。世界の主な中央銀行と比べ明らかに過大である。もともと緊急時の異例の策だ。このまま続けるわけにはいくまい。

 日本は欧州と異なり、国債の約9割を国内の資金で消化しているので大丈夫、との主張もある。だが、将来世代に借金のツケを回すことに変わりはない。

 ◆今こそ予算にメスを

 問題は、国の危機感の乏しさだ。20年度当初予算案で一般会計の総額は2年連続で100兆円を超えた。予算の無駄に、きちんとメスが入っているのか疑わしい。

 各省庁が要求する施策に厳しく優先順位をつけ、限りある予算を効率的に活用することが大切だ。配分にメリハリを利かせ、漫然と続けてきた不要な事業を排除する仕組みを構築するべきだ。

 予算の執行状況を、会計検査院が事後チェックする日本とは違い、欧米の多くの国には、予算案の段階から監視し、財政健全化の道筋を検証する独立機関がある。日本でも研究してはどうか。

 無論、財政再建を進めるには成長率の底上げによる税収増が必要だ。ただ、所得税や法人税は景気で税収が変動する短所がある。

 社会保障の安定財源を確保するため、税収の増減が少ない消費税の税率を、10%からさらに引き上げることも避けては通れない。

 着実に進む少子高齢化に対し、国の対応は後手に回り続けた。

 国民が「人生100年時代」を謳歌おうかできる国にするべく、今こそ改革を断行したい。

無断転載禁止
984892 0 社説 2020/01/06 05:00:00 2020/01/06 05:00:00

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