揺れる経済秩序 自由貿易堅持へ国際協調探れ

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 ◆デジタル化への対応も急務だ◆

 世界経済は二つの変革の波にもまれている。今年は国際協調が問われる重要な年になろう。

 一つは、戦後の成長を支えた多角的な自由貿易体制の揺らぎである。

 主要20か国・地域(G20)の結束は影を潜め、米国は保護主義に走っている。先進国と新興国の間のきしみも目立つ。

 二つ目は「経済のデジタル化」だ。小売業から金融まで、あらゆる分野に影響は広がっている。

 時代の変化に即した新たな国際経済秩序の構築が急がれる。

 ◆不透明な中国産業政策◆

 世界経済にとって最大のリスクは、米中貿易摩擦の激化だ。

 戦後一貫して守ってきた世界首位の超大国としての座を中国が脅かす。対立の背景には、米国のそんな危機感があるのだろう。

 1978年に改革・開放政策を導入した中国は、外国から資本と技術を呼び込み急成長した。

 90年には、名目国内総生産(GDP)が米国の6~7%、日本の1割強だったが、2010年に日本を抜いてGDPで世界2位となった。現在は米国の7割程度の水準まで迫っている。

 発展の原動力となっているのは、中国共産党が経済活動を主導する「国家資本主義」である。

 代表的なのが政府補助金による自国企業の育成だ。19年版の通商白書によれば、中国政府の上場中国企業への補助金は17年時点で約2・2兆円と、09年の3・7倍に上った。対象分野は自動車、半導体、エネルギーなど幅広い。

 国有銀行による低利融資や政府系ファンドの投資も加わり、いまや、次世代通信規格「5G」技術の開発などでは最先端を行く。各国が問題視するのは当然だ。

 新興国では、13億人超の人口を抱えるインドの躍進も目立つ。

 19年に英国やフランスを抜きGDPで世界5位になった可能性がある。25年頃には4位のドイツも抜くとみられる。英国の欧州連合(EU)離脱を控え、精彩を欠く欧州勢とは対照的と言えよう。

 インドも外資の参入規制などが根強く残る。中印両国は保護主義反対を掲げる以上、市場開放を進め、行動で示してもらいたい。

 1930年代前半、不況に陥った各国は自国産業を守るため、関税引き上げや輸入制限を乱発した。保護主義の広がりは第2次大戦の一因になった。

 ◆歴史の教訓直視したい◆

 反省から作られたのが「関税・貿易一般協定」(GATT)だ。ルールの下で自由貿易を推進するとの理念は、世界貿易機関(WTO)に継承されたが、新興国の台頭で意見集約が難しくなった。

 WTOに頼らず、環太平洋経済連携協定(TPP)のような地域ごとの経済連携協定を締結する動きは今後も加速するだろう。

 とはいえ、WTOの存在意義が失われたわけではない。国・地域間の利害衝突はなくならないからだ。まずは、先月から停止する貿易の紛争処理機能を早期に回復させることが求められる。

 現在の紛争処理に不満を持つ国は多い。日本を含む各国が知恵を絞り、改善策を見いだしたい。

 これまで培った自由貿易の枠組みを壊さぬよう、米国も高圧的な態度を改める必要がある。2国間交渉で制裁関税の発動をちらつかせて自国の主張をのませる。そんなことを繰り返すようでは各国の信頼は得られまい。

 ◆寡占化に注意が要る◆

 ネット技術の革新は人々の利便性を高めた一方で、巨大なIT企業を生み出した。グーグルやアップルといった米国勢に加え、中国企業の成長が著しい。多くは年間の最終利益が1兆円を超える。

 IT企業は無料・安価なサービスを提供する代わりに、世界中から膨大なデータを収集し蓄積する。それを武器に市場で寡占化を進めている。絶大な力に、各国が警戒を強めるのは無理もない。

 米フェイスブックは自らが主導して、独自の暗号資産(仮想通貨)の発行を検討している。この「リブラ」計画は、国家が管理する既存の通貨体制への脅威になり得るとして、世界に波紋を広げた。

 民間の動きに触発されて、中国などでは、中央銀行がデジタル通貨の発行準備を進めている。

 デジタル取引に国境はない。データの不適切な取り扱いを防ぎつつ、いかに安全性と透明性を高めるのか。世界中で利益を上げるIT企業にどのように課税すべきか。各国共通の課題である。

 通商以外でも、先進国と新興国が結束して対応する必要性は増している。G20会議などを通じて連携を模索しなければならない。

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989222 0 社説 2020/01/08 05:00:00 2020/01/08 05:00:00

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