英国のEU離脱 欧州は地盤沈下をどう防ぐか

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 ◆米中対立の中で問われる存在感◆

 英国が日本時間の1日朝、欧州連合(EU)から離脱する。EU加盟国の脱退は初めてだ。戦後長年にわたり統合を進めてきた欧州にとって、歴史的な転換点となる。

 EUと英国は国際政治・経済に与える影響を自覚し、安定した関係を構築しなくてはならない。

 ◆外交安保の連携維持を

 懸念されるのは、欧州の一体性が弱まり、米国との関係が一段と冷え込むことだ。

 英国は、EU内でドイツに次ぐ経済規模と、フランスに並ぶ軍事力を持ち、外交面で欧州と米国の懸け橋の役割を担ってきた。

 トランプ米大統領が自国第一主義を強めるのに対し、EU主要国のドイツとフランスは多国間主義を重んじる。気候変動対策や対イラン政策などで、米国と独仏の確執は顕在化している。

 中国への対処を巡っても、「現状変更勢力」と位置付け、警戒する米国と、経済パートナーとして重視するEUの溝は大きい。

 EUは、米中対立に巻き込まれず、保護主義に走る米国を牽制けんせいし、自由貿易を推進することができるのか。米国とEUの通商交渉は、EUが存在感を示せるかどうかの試金石となろう。

 ロシアの脅威やイランへの対応など、欧州が一枚岩になるべき外交課題は多い。EUと英国が緊密な連携を保つことが、国際秩序の安定のためにも不可欠だ。

 欧州の安全保障を支える北大西洋条約機構(NATO)の重要性は変わらない。ジョンソン英首相は、EU離脱後もNATOに積極的に貢献すると約束した。着実に履行することが求められる。

 ◆模索する統合のあり方

 EUは、英国の離脱で27か国になる。それでも、経済規模は中国の国内総生産(GDP)を上回り、共通通貨ユーロはドルに次ぐ影響力を持つ。巨大市場やユーロの力を保てるかが問われよう。

 英国に続いて離脱を志向する国は今のところないが、「EUの権限が強すぎる」という問題提起には対処する必要がある。

 冷戦下の西欧で始まった欧州統合は、2度の世界大戦の反省に立って進められた。フランスなどがドイツを自由主義陣営に引き込んで作った共同体が、冷戦終結後も欧州の平和と繁栄を支えた。

 そのあり方が今、揺らいでいる。英国の離脱は、EU条約にうたわれた「絶えざる緊密化」を目指す路線に、再考の余地があることを浮き彫りにした。

 EU加盟国の間では、ドイツ、オランダなどの北部とイタリアを筆頭とする南部との経済格差や、東欧でのナショナリズムの高揚により、遠心力が働いている。すべての問題で団結を求めるのは現実的ではあるまい。

 EUが欧州統合の理念への支持を維持するには、時代が要請する課題に取り組み、成果を上げるしかない。気候変動対策で主導権を発揮しようとしているのは、そうした問題意識の表れと言える。

 マクロン仏大統領は、「デジタル化時代への対応」でも、EU内の「重要なプレーヤー」が協力して取り組むことを提唱する。

 課題ごとに、利害が合致する国が「有志連合」的に連携するという発想だ。全会一致にこだわらない柔軟な運営は、難民受け入れ問題での分裂回避や、EUの活性化にも有効だろう。

 英国はジョンソン氏が強調する通り、EUの束縛から逃れて競争力を高めることができるのか。

 ◆英経済にリスクは残る

 ロンドンの金融街「シティー」は活況を呈している。法人税率の低さや金融の専門家がそろっているのが魅力だ。だが、日米欧の金融機関の間では、離脱に伴う混乱を避けるため、拠点を英国から移転する動きも出ている。

 ジョンソン氏は、各国と個別に通商協定を結べるようになることから、「英国はよりグローバルになる」と語る。独自の移民政策によって、単純労働者を減らし、高度な能力を持つ移民の受け入れに力を入れるという。

 英国とEUの経済関係は、今年末までは移行期間として、現状が維持される。EUとの自由貿易協定(FTA)交渉が不完全な合意に終わり、貿易や物流に支障が出るリスクは残る。

 英国とEUは、交渉の見通しを早い段階で内外に示すことが求められる。企業側は、混乱への備えが欠かせない。

 日本も、英国との通商交渉を近く始める。EUと英国は、法の支配や民主主義などの価値観を共有する重要な協力相手だ。両者との関係強化を図るべきである。

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1031093 0 社説 2020/02/01 05:00:00 2020/02/01 05:00:00

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