海自艦中東へ 円滑な部隊運用の態勢整えよ
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海上自衛隊の護衛艦が中東での情報収集活動に向かった。現場の隊員が的確に任務を果たせるよう、政府は万全の態勢を整えねばならない。
安倍首相は、出航に際する訓示で、「情報収集任務は、国民生活に直結する極めて大きな意義を有する」と強調した。
日本は原油輸入の大半を中東に依存している。年間3000隻超の日本関連の船舶が、中東の海域を通航する。政府が自衛隊を派遣し、海上交通路の安全確保に主体的にかかわるのは当然だ。
護衛艦は、防衛省設置法の「調査・研究」の規定に基づき、2月下旬からオマーン湾やアラビア海北部などで活動する。レーダーや搭載ヘリを使い、現場海域を航行する船舶の種類や船籍を調べ、不審な船の覚知にあたる。
哨戒機2機は先月から、現場で監視任務についている。
派遣部隊は、危険な兆候を察知した場合、国土交通省経由で海運会社に通知し、航行海域の変更などを要請する。官民で速やかに情報を共有する仕組みを構築することが欠かせない。
広大な海域を自衛隊だけで調査するのは限界がある。
既に米国や英国、豪州などが、米国主導の枠組みで周辺海域に艦艇を派遣している。防衛省は、情報交換のためバーレーンにある米海軍司令部に自衛官を送った。自衛隊は、各国部隊との緊密な連携に努める必要がある。
懸念されるのは、日本のタンカーが襲撃されるといった不測の事態への対応だ。調査・研究の名目では、護衛艦は武器を使って他の船を守ることができない。
政府は、緊急時には自衛隊に海上警備行動を発令し、日本籍船の防護を可能にする。発令には、閣議決定が必要となる。情勢が悪化した場合には、遅滞なく任務を切り替えなければならない。
海上警備行動でも、自衛隊の防護対象は日本籍船に限られる。
外国船の危機に遭遇した場合、護衛艦は武器を使わずに、不審船を遠ざけるといった難しい対応を迫られよう。現場の指揮官が戸惑うことのないよう、様々な事態を想定しておくことが重要だ。
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日本は米国と同盟関係を築く一方、イランとも友好的な関係にある。政府は、対話による解決を粘り強く両国に促すべきだ。