米比関係 同盟堅持で対中牽制を続けよ

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 米国とフィリピンの同盟関係が揺らげば、アジア太平洋地域の不安定化を招く。米比の離間によって中国の強引な海洋進出を許した歴史を繰り返してはならない。

 フィリピン政府が米軍に関する地位協定を破棄すると米側に通知した。180日後に失効する。

 1998年に署名された地位協定は、軍事演習などのためにフィリピンを訪れる米軍関係者の法的地位を定めている。入国審査の簡素化も盛り込んでいる。

 両国間には同盟の基礎となる相互防衛条約がある。それでも、地位協定の破棄で合同軍事演習や米軍の地域での活動に支障が出るのは避けられない。

 フィリピンのドゥテルテ大統領は、一部閣僚や軍幹部の反対を押し切り、破棄に踏み切った。自らが主導する麻薬取り締まりを指揮した元警察トップの上院議員が、米国入国を拒否されたことに対する「対抗措置」だとされる。

 ドゥテルテ政権が麻薬犯罪容疑者の超法規的な殺害を容認していることを、米国は人権侵害だと批判し、両国間のあつれきとなっている。だが、安全保障は全く別次元の問題である。

 ドゥテルテ氏は、米国との同盟関係が、フィリピンや周辺地域の安定に寄与していることを理解していないのではないか。破棄を撤回すべきだ。

 フィリピンは冷戦時代、アジアでの共産圏拡大を警戒する米国の軍事的拠点だった。米軍は南シナ海に面するスービック海軍基地やクラーク空軍基地に駐留した。

 冷戦終結と反米感情の高まりを受け、米軍は1990年代前半に全面撤退した。中国は米軍不在の「力の空白」を突き、南シナ海での領有権主張を強めた。米比は地位協定を結び、軍事演習を再開して中国を牽制けんせいしてきた。

 ドゥテルテ氏がこうした経緯を無視し、中国への傾斜を強めているのは看過できない。中国の領有権主張が2016年の仲裁裁判所判決で否定されたにもかかわらず、中国に受け入れを迫らず、経済協力を優先している。

 中国はこの数年で南シナ海に人工島を造成し、軍事拠点化を進めた。フィリピンの米国離れによって米軍の地域での活動が減少し、中国が影響力を更に増大させる事態は防がねばならない。

 トランプ米大統領は協定破棄について、「気にしない。多額の金が浮いてありがたい」と述べた。地域の安全保障環境に及ぼす悪影響への認識が足りなすぎる。

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1054150 0 社説 2020/02/15 05:00:00 2020/02/15 05:00:00

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