大震災9年 整備された基盤を生かしたい

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 新型コロナウイルスの影響により、各地の追悼式典が中止される中で、東日本大震災の発生から9年を迎えた。

 死者・行方不明者や、震災後に亡くなった関連死の人は2万2000人に上る。心から哀悼の意を表したい。

 被災地では、仮設住宅団地の居住者が900人台に減る一方、復興住宅の整備や宅地造成の進捗しんちょく率は100%に近づいている。宮城県から青森県まで続く三陸沿岸道路も来年度には完成する。

 32兆円の国費を投じる被災地の生活基盤整備は、終点が見えてきたと言えよう。

 8年にわたる復興計画を終えたのが宮城県女川町だ。多くの犠牲者を出し、人口は4割減ったが、中心部のかさ上げ地には、新たな商店街ができ、週末には地元の人や観光客でにぎわう。

 住民の意見集約が早く進んだことが、コンパクトな街づくりに結びついた例だろう。

 他方、整備された基盤が生かされていない自治体もある。

 岩手県陸前高田市の造成地では現在も空き地が目立つ。津波で流された中心街に大量の土砂を運び込んでかさ上げし、60ヘクタール超の宅地を造った。だが、実際に利用されているのは半分に満たない。

 国土交通省が昨秋に行った被災3県の土地区画整理事業の調査では、約35%が未利用地だった。造成に時間がかかり、避難先で暮らす地権者が、元の土地での生活再建を諦めた例が多い。

 幅広い世代が交流できる場を設けるなど、こうした土地を活用する手立てを考える必要がある。

 ハード面に加えて、ソフト面の対策の充実も欠かせない。

 被災経験に苦しむ人は少なくない。震災直後から子供の心のケアを続けている臨床心理士によると「私の持ち物を取りに戻ったお父さんが津波にさらわれた」と今なお自分を責める女性がいる。

 ある女性は「生活再建に追われ、そのいらだちから子供に当たってしまう」と悩みを打ち明けたという。自治体や民間の福祉団体が連携して、被災家庭への訪問相談を実施するなど、今後も継続した支援が求められる。

 ここ数年、震災の記憶を伝承する取り組みが進んだ。陸前高田市には津波伝承館が誕生し、被災した消防車や体験者の手記が展示されている。宮城県気仙沼市や東松島市では、被災した校舎や駅を震災遺構として保存している。

 一人でも多くの人が震災を知ることで、風化を防ぎたい。

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1100914 0 社説 2020/03/11 05:00:00 2020/03/11 05:00:00

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