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強権統治の加速 「感染症」で正当化はできぬ

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 新型コロナウイルスの感染防止のため、人々が抗議に集まりづらい状況に便乗し、政権に反対する勢力を抑え込む。危機を口実にした強権統治の加速は看過できない。

 多くの国が外出制限などの厳しい措置を取る。非常時に国民の自由や私権を一定程度制限するのはやむをえない面がある。だが、民主主義とは異なる政治体制や、独裁的な指導者が率いる政権では、より強い警戒が必要だ。

 香港では昨年6月以降、反政府デモが激化の一途をたどった。今は感染拡大を受けて、5人以上集まることが禁止されている。

 そのさなかに、香港当局は中国に批判的な民主派の主要メンバー15人を逮捕した。昨年のデモを主催した団体の幹部も含まれる。

 中国政府は香港に「一国二制度」に基づく高度な自治を認めているが、実際には介入を強めている。住民が街頭に出て抗議の声を上げることが困難な時期に合わせて、香港への締め付けを強化しているのではないか。

 ポンペオ米国務長官は、香港で集会や表現の自由が侵害されていることへの強い懸念を表明した。9月には立法会(議会)選が予定される。民主派が不当な弾圧を受け、選挙運動を妨げられることがあってはならない。

 カンボジアでは、政府が非常事態を宣言した場合に、移動や集会の禁止、メディア規制強化などが可能になる法案が可決された。感染症以外の事態にも適用できるという。乱用の懸念が拭えない。

 フン・セン首相はすでに最大野党を解党させ、一党独裁体制を敷く。欧州連合(EU)は関税優遇措置を一部停止する制裁を決めたが、中国は経済支援を強化している。今回の法整備で強権統治に拍車がかかるのではないか。

 非常事態宣言下にある東欧のハンガリーでは、オルバン首相の権限拡大を無制限に引き延ばす異例の法案が可決された。強権で知られるオルバン氏が超法規的な措置を恒久的にとれる道が開けた。

 法案には、ウイルス対策に有害な「偽情報」を流した人物の収監も盛り込まれている。野党勢力の弾圧やメディア統制の手段に使われかねない。EUは、「緊急事態は無期限に続くべきではない」とくぎを刺した。

 感染症との戦いは長く続く。危機下でも言論や表現の自由を確保する取り組みが欠かせない。各国が権力の抑制的な行使に努めると同時に、国際社会が強権的な政権に目を光らせることが重要だ。

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1185599 0 社説 2020/04/25 05:00:00 2020/04/25 05:00:00

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