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非常時対応の論議を深めよう 

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 ◆権限行使の根拠や手続き定めよ◆

 非常時への備えを定めておくことは、国の責務である。与野党は、憲法のあり方に踏み込んで論議を深めるべきだ。

 73回目の憲法記念日を迎えた。国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という憲法の理念は、国民に定着し、日本の発展に大きく寄与した。

 一方、一度も改正されていない憲法は、急速に変化する日本や国際社会に対応しきれていない。憲法を不断に見直し、適切に機能させることが求められる。

 ◆緊急事態条項の検討を

 日本は今、新型コロナウイルスによる感染症危機の渦中にある。経済はグローバル化し、人やモノは国境を越えて行き交う。現代社会では、感染症は瞬く間に世界に拡散し、多くの死者を出し、社会や経済を麻痺まひさせる。

 想定外の危機に、政府は万全の態勢を有していたか。憲法をはじめ、日本の法律や諸制度は有効に機能したと言えるか。立ち止まって考える機会とすべきだ。

 現行憲法は、緊急事態の規定を設けていない。政府は、憲法制定時に、国家緊急権を盛り込むよう連合国軍総司令部(GHQ)に対して提案したが、受け入れられなかった。

 災害や武力攻撃など事態の内容に応じて、個別の法律で具体的な対応策を定めてきた。憲法が危機管理規定を欠くのは、政治の不作為と言わざるを得ない。

 自民党は2018年にまとめた4項目の憲法改正案で、緊急事態条項の創設を提案した。異常かつ大規模な災害で、国会を開けない場合、政府が法律と同じ効力を持つ政令を制定できる内容だ。

 緊急事態には迅速で適切な対応が求められる。憲法に基本原則を規定したうえで、法律で政府権限の内容や手続き、歯止めなどをあらかじめ明記しておくのは、法治国家として当然だろう。

 超法規的な措置で、人権侵害や行き過ぎた私権制限が起きるのを防ぐためにも重要ではないか。

 自民党案では、自然災害が対象で、外国からの武力攻撃やテロ、感染症は想定していない。

 感染症が大流行する事態を、巨大地震などと並んで緊急事態条項の対象として位置づけることは検討に値しよう。

 読売新聞社の世論調査では、憲法で特に関心があるテーマとして、緊急事態を挙げた人は約4割にのぼり、前年より増えた。新型コロナウイルス感染の拡大が影響したとみられる。与野党は、真摯しんしに議論しなければならない。

 感染拡大を国家の危機と受け止め、各国は強権を発動している。スペインやイタリアは憲法に基づく非常事態を宣言し、国民の外出や経済活動を制限した。

 ◆国会の機能維持も論点

 各国は時代の変化に合わせ、緊急事態の対象をテロや自然災害にも広げている。こうした事例も参考にしたい。

 緊急事態に国会の機能を維持する方策も、論点の一つだ。

 憲法は、衆参両院は総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開けないと定める。緊急事態においては、定足数を満たせない可能性はありうる。

 立法府が機能しなければ、予算や法案を成立させることができず、的確に対処できまい。

 自民党は、大災害で国政選が実施できない場合、憲法が規定する衆院4年、参院6年の国会議員の任期を特例として延長できるようにする案も示している。

 今の衆院議員の任期は、来年10月までだ。緊急事態が起きて、広い範囲で国政選を行えなかった場合、多数の議席が欠員になる可能性もありうる。民主主義を適切に機能させる観点から、各党は、対応策を詰めなければならない。

 ◆審査会は役割を果たせ

 衆参両院の憲法審査会は今国会で一度も開かれていない。与党の呼びかけに対し、野党は緊急事態の議論は平時に行うべきだとして、開催に応じていない。

 当面の感染症対策は、関係の委員会で審議すべきであるが、現実の課題に照らし、最高法規のあり方を論じるのが審査会の本分である。討議を拒む野党の姿勢は到底、理解しがたい。

 与野党は、早期の開催に向けた道筋をつけるべきだ。

 中国や北朝鮮の軍事的脅威は高まる。国と国民を守る自衛隊の役割は重要性を増している。

 自衛隊の根拠規定を憲法に明記し、一部に残る違憲論を払拭ふっしょくするための9条の改正にも取り組まねばならない。自民党は国民に対して、改正内容と意義を粘り強く訴えることが大切だ。

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1200956 0 社説 2020/05/03 05:00:00 2020/05/03 05:00:00

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