銀行の手数料 利用者の負担軽減につなげよ
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銀行の振込手数料を割高だと感じる人は多い。旧来の取引慣行を改め、利用者の負担軽減につなげてもらいたい。
公正取引委員会は、銀行間の送金手数料について、金融界に実質的な引き下げを求める報告書をまとめた。「事務コストを大きく上回る水準が長年にわたって維持されている現状の是正に取り組むべきだ」と明記した。
送金手数料は銀行同士の交渉で決まる。差が出てもおかしくないのに、40年以上横並びが続く。公取委が、高止まりする手数料の見直しを促す狙いは理解できる。
銀行間の送金は、「全銀システム」と呼ばれる専用の決済ネットワークを通じて行われる。1日平均で680万件前後の取引が処理され、報告書はそのコストを1件あたり数円と試算している。
これに対し手数料は送金額が3万円未満で117円、3万円以上では162円に設定されている。安全で利便性の高いシステムを維持するのに相応の費用がかかるとはいえ、これでは手数料の妥当性を疑われても仕方あるまい。
銀行業界は手数料を来春から見直す方向で調整に入った。改革に動き出したのは当然と言える。
銀行間の手数料が下がれば、利用者が銀行に支払う振込手数料も安くできるはずだ。
料金算定の根拠を明確にすることも重要である。社会インフラを担う企業として透明性の向上に努めねばならない。
キャッシュレス決済の普及にも追い風となるのではないか。
「ペイペイ」などのQRコード決済の事業者も、加盟店との間で銀行振り込みを利用する。送金手数料が安くなれば、こうした事業者の負担は軽くなろう。
QRコード決済の利用者は、スマートフォンに自分の銀行口座などからチャージ(入金)する。その際に決済事業者が銀行に払うチャージ手数料も課題とされた。
公取委は「決済事業者の収益を明らかに大きく上回る手数料を提示する事例がみられた」と指摘し、「独占禁止法上、問題となるおそれがある」と警告した。金融界は重く受け止めるべきだ。
IT企業の取り組みを後押しして金融ビジネスを多様化することは、利用者の利益にかなう。ただ、超低金利の長期化に伴い銀行の収益力は低下している。
海外では、金融機関が口座維持手数料を徴収する代わりに、振り込みなどを安くする例もある。手数料のあり方について、官民で議論を深めていくことが大切だ。