検事長辞職へ 検察は体制を早急に立て直せ
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刑罰権を行使する機関の幹部として、自覚に欠ける行動をとった以上、辞職は当然だろう。
黒川弘務・東京高検検事長が、辞職願を提出した。5月に2度、産経新聞記者らと賭けマージャンをしたと、週刊誌で報じられていた。
黒川氏は法務省の調査に対し、金銭を賭けたことを認めた。このため、法務省の内規に基づく訓告処分を受けた。
賭けマージャンは、刑法の賭博罪の対象になり得る。高い順法意識が求められ、公私とも疑いを持たれる行為を慎むべき検察官として、不適切な行為である。
まして、東京高検検事長は、法務・検察で検事総長に次ぐナンバー2に位置づけられる。検察の廉潔性や公正さを、身をもって示さねばならない責任ある役職だ。
賭けマージャンが行われたのは、新型コロナウイルスの緊急事態宣言下だった。多くの国民が外出を自粛し、人が集まる場での娯楽を控えていた。黒川氏の行動は、著しく緊張感に欠け、軽率とのそしりを免れない。
黒川検事長を巡っては、安倍内閣が1月、従来の法解釈を変更して、定年を半年延長する異例の措置を取った。「次期検事総長にする思惑があるのではないか」との臆測が広がった。
森法相は、定年延長の理由を国会などで明確に説明できず、国民の不信を招いた。検察トップとしてのリーダーシップを発揮せず、人事の混乱を許した稲田伸夫・検事総長の責任も重い。
国民の信頼を回復するには、検察組織の立て直しが急務だ。後任の高検検事長を始めとする検察幹部は、混乱を収拾し、組織の一体感を取り戻す必要がある。
検事長ら幹部の定年を内閣の判断で延長できる特例規定を盛り込んだ検察庁法改正案は、今国会での成立が見送られた。黒川氏の定年延長と後付けで整合性をとるように受け止められ、検察の独立性を脅かすと批判された。
今後も、政治から距離を保ち、検察人事の自律性を保つためには、検察自らがしっかりと自浄作用を働かせるべきだ。
今回の賭けマージャンには、産経新聞記者と、朝日新聞社員の元記者が参加していた。産経、朝日両社は、不適切な行為だったと謝罪のコメントを出した。
報道機関にとって、取材源の秘匿は大原則である。同時に、取材対象者との接触を重ねる過程で、違法性を問われる行為に手を染めることがあってはならない。