改正著作権法 作者の正当な権利を守りたい
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ネット上に無断掲載された漫画や小説を閲覧のために保存する行為は、作者の権利を侵害し、出版文化を衰退させる。手立てを尽くして、被害を食い止めなければならない。
海賊版サイト対策を強化する改正著作権法が成立した。
音楽と映像に限っていた規制の対象を、漫画や小説、論文などの著作物全般に拡大した。海賊版と知りながらダウンロードする行為は、原則として違法になる。繰り返しダウンロードする悪質な行為には、刑事罰も設けた。
ただ、分量が少ないケースなどは対象外とした。ネット利用者が
創作活動は作者や出版社が正当に対価を得てこそ成立する。そうしたことを理解せず、気軽に海賊版サイトを利用する人は多い。
政府は改正法の趣旨を周知し、海賊版のダウンロードは、損害賠償や刑事罰にも値する違法行為だと認識してもらう必要がある。
改正法は、ネット利用者を海賊版に誘導する「リーチサイト」の規制も盛り込んだ。利用者の多くは、こうしたサイトを通じて海賊版に接続しているためだ。
規制の対象は、従来の海賊版サイトから、リーチサイトや閲覧者にまで広がった。政府や警察当局は、法令を駆使し、違法サイトを追い詰めたい。
ネット上では常時、数百の海賊版サイトが稼働し、月に数千万人が利用しているとされる。とりわけ、海外でも人気が高い漫画は、被害が深刻である。
昨秋、運営者が逮捕された中国の海賊版サイトは、漫画を中心に40万人もの利用者がいたという。日本の出版社は多額の費用をかけて監視を続けており、数年がかりで実態を解明し、中国当局に働きかけて摘発に至った。
海賊版やリーチサイトは、海外のサーバーを使っているケースが多く、特定は容易ではない。調査に時間がかかり、その間に被害は拡大する。捜査当局には海外機関との連携強化も求められる。
総務省は違法サイトの運営者情報を、接続事業者が開示しやすくする制度を検討中だ。実現すれば損害賠償請求がこれまでより容易になるが、課題も多い。
出版不況の中、電子出版の市場は昨年2割以上伸びた。法改正の契機となった海賊版サイト「漫画村」の閉鎖もあり、正規版サイトの利用者が増えたためだ。
出版文化の重要性を共有し、社会全体で守ることが大切だ。