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新型コロナウイルスの流行による経済危機をどう克服し、どんな国の未来像を描くのか。政府の決意が見えてこない。
政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)や成長戦略実行計画などの「政府4計画」を閣議決定した。骨太の方針は、感染抑止と経済活動の両立に向け、行政や社会のデジタル化を推進することを掲げた。
一方、今後の展望では、記述が見送られたものが目立つ。
名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすとの文章がなくなり、2025年度に国と地方の基礎的財政収支(PB)を黒字化する目標も消えた。
麻生財務相は「目標を直ちに見直す必要があると考えていない」と述べるにとどまっている。
財務省は9月末に締め切る来年度予算の概算要求で、各省庁に上限なしの要求を認める方向だ。
コロナ対策を優先した財政措置はやむを得ないが、予算膨張が加速しかねない。いかに効率的に経済の回復につなげるかという視点が不十分だ。国民の将来不安は高まっており、中長期の展望を示す重要性も忘れてはなるまい。
気になるのは、骨太の形骸化が進みつつあることだ。
経済財政諮問会議が発足した01年から始まり、過去には国と地方の税財政改革「三位一体改革」や年金改革、郵政民営化などの主要施策を主導してきた。
第2次安倍内閣以降は、骨太に盛り込むことが予算獲得の手段となり、各省の政策の寄せ集めになった感がある。ページ数は昨年、01年の2倍以上に膨らみ、政策の優先度は見えにくくなった。
今年はスリム化したが、枚数の圧縮だけでなく、中身となる政策を大胆に重点化するべきだ。
九州豪雨などを受けた国土
過去の公共事業削減の動きの中でダムの建設が中止され、被害拡大につながったのではないかとの指摘がある。予算編成では、治水対策に何が必要なのかをしっかり議論してもらいたい。
コロナ後の社会像について、政府は成長戦略の司令塔である未来投資会議を拡大し、新たな協議の場を設けるという。会議ばかりが乱立することにならないか。
4計画は重複が多く役割分担も不明確だ。国民にわかりやすく重要政策を示す方法を考えたい。