戦後75年 国際協調維持へ役割果たそう

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◆惨禍招かぬよう記憶を伝えたい◆

 75回目の終戦の日を迎えた。政府主催の全国戦没者追悼式が東京の日本武道館で行われる。

 新型コロナウイルスの感染防止のため、初めての縮小開催となる。

 参列者は500人余りで、例年の10分の1を下回る。会場が密集状態にならぬ配慮に加え、遺族の参列を見送る府県もある。高齢者が多い以上、やむを得まい。

 昭和の戦争で命を落とした310万人に対し、心より冥福めいふくを祈る意義はいささかも変わらない。その尊い犠牲を礎に、今日の日本がある。戦後75年の平和と繁栄を守り抜かねばならない。

 ◆深刻化する国家間対立

 戦後50年の1995年には、米ソ冷戦は既に終結し、イデオロギー対立の時代は去っていた。平和への期待が高まっていたが、それから四半世紀後の現在、国際秩序はむしろ動揺を深めている。

 対テロ戦争で疲弊した米国は、「自国第一」主義を強めている。中国は南シナ海や香港などの問題で国際ルールをないがしろにし、米中対立が激化している。ロシアもクリミア併合などで、一方的な現状変更を重ねてきた。

 大切なのは、複雑化する国家間の対立構造を冷静に把握することだ。政治学者の北岡伸一氏らの共同研究に基づく近著「新しい地政学」に重要な指摘がある。

 冷戦後は、対抗関係にある国々の間にも、緊密な経済交流が存在している。グローバル化した経済の下では、政治力、軍事力とともに、経済力の戦略的意義が問われるようになった、という。

 特に中国が巨額の経済援助と圧力を絡め、影響力拡大を図ってきた手法を見れば、うなずける。

 日本としては、軍事力や経済力の重なり合った対立を緩和し、国際ルールに即した協調路線へ引き戻す役割を果たしたい。

 その発言権を確保する上で不可欠なのは、経済力を低下させず、国内の安定を保つことである。

 目下の難題は新型コロナウイルスの流行と世界経済の失速だ。政府は感染抑止と経済再生の両立に全力を挙げねばならない。

 社会不安が高まれば、政治不信が加速する。ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭し、無謀な戦争へ突き進んだ戦前の歴史を考えれば、健全な内政こそは国際協調に資する外交の前提と言えよう。

 ◆基盤は現実的な防衛論

 今年は朝鮮戦争開戦、そして自衛隊の前身である警察予備隊の発足から70年の節目にあたる。

 ともに1950年夏、戦後5年のことだ。当時、読売新聞社長だった評論家の馬場恒吾は「如何なる国も或程度まで自から衛る力を必要とする」と説いている。

 また「国の安全を守ることは米国軍に委任して、われわれは自分の生活をよくさえすればよいとの心理にひたり過ぎた」と記している。戦後の平和は、こうした現実的な防衛論に支えられてきた。

 54年の自衛隊創設に続き、60年には、現行の日米安全保障条約が締結された。日米同盟は、アジア太平洋地域の安定に欠かせない基盤となっている。

 最も切迫した脅威は核・ミサイル開発を進め、挑発を繰り返す北朝鮮である。自衛隊の役割を強化し、日米同盟を強固なものにする努力が肝要だ。陸・海・空に加え、宇宙やサイバー空間も想定し、抑止力を高めたい。

 国際協調に対する挑戦がどれほど悲惨な結果を招くか。戦争の記憶を継承し、世界へ訴え続けることは日本人の責務である。

 ◆領土の歴史も正確に

 京都産業大名誉教授の所功さんは中学生になって初めて母親から父の戦死公報を見せられた。最後の手紙には「どうか立派に功を育ててくれ」とあったという。

 72年、父の享年と同じ30歳の時にソロモン諸島で遺品や遺骨を発見した。戦没者の無念さを受け止めることは、戦後日本の針路を堅持する決意を新たにさせよう。

 遺憾なのは、日本の外交努力にもかかわらず、一部の近隣国との間で、昭和の戦争に遡る懸案が解決に至っていないことだ。

 ロシアは憲法改正で「領土の割譲禁止」を明記した。旧ソ連が北方4島を不法占拠した事実を正当化するもので、北方領土交渉への悪影響が懸念される。

 日韓関係は元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)問題で、一段と悪化している。65年の日韓請求権・経済協力協定に反する韓国最高裁の判決に、文在寅政権が善後策を講じていないためだ。

 戦後75年を機に、領土や戦後処理の歴史を、若い世代に正しく伝えていくことが重要である。

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1411548 0 社説 2020/08/15 05:00:00 2020/08/15 05:00:00

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