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汚職事件で起訴された国会議員が、保釈中に裁判の証人を買収しようとした疑いが浮上した。前代未聞の事態で、事実とすれば、司法の公正をゆがめる言語道断の行為である。
カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡り、収賄罪で起訴された秋元司衆院議員が、今度は組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。逮捕は3回目だ。
汚職事件で秋元被告は、内閣府のIR担当副大臣だった2017~18年、事業への参入を目指す中国企業の元顧問らから、議員会館などで総額約760万円相当の賄賂を受け取ったとされる。
今回は支援者らと共謀し、「議員会館で会っていない」と裁判でウソを言うよう、贈賄側に働きかけた疑いが持たれている。
贈賄側が起訴事実を認めている一方、秋元被告は全面否認している。贈賄側を買収して裁判を有利に進めようとしたのであれば、悪質な
特捜部は、秋元被告が買収を主導したとみている。徹底した捜査で真相を解明してほしい。
支援者らは、ウソの証言をする報酬として、贈賄側に現金計3000万円を渡そうとした容疑で逮捕されている。買収資金は賄賂額を大きく上回る。資金の出所の解明が捜査のポイントになろう。
事件の関係者が口裏合わせをするのは、珍しくはない。だが、主張が対立する相手にウソの証言を頼み、現金まで提供しようとするなど、聞いたことがない。露見するリスクの高い行為に及んだ経緯を明らかにせねばならない。
秋元被告は起訴後すぐに保釈され、支援者らと面会を重ねた。保釈は妥当だったのか。裁判所は近年、積極的に保釈を認めている。裁判員裁判の導入で国民の目を意識し、勾留の必要性を厳しく判断するようになったためという。
一方、日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が保釈中に海外逃亡するなど、トラブルも目立つ。逃亡や証拠隠滅の恐れがないか、厳格に見極めてもらいたい。
IR事業は、今回の汚職事件と新型コロナウイルスの流行で暗礁に乗り上げている。ギャンブル依存症や治安悪化への懸念も拭えず、実現は容易ではあるまい。
秋元被告は自民党を離党したが、議員は続け、保釈中に委員会で質問もした。推定無罪の原則があるとはいえ、重大な疑惑を抱えた議員に質問の機会を与えたのには首をかしげざるを得ない。国会の権威を疑わせる光景だ。