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仏紙風刺画再掲 「表現の自由」で許されるのか

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 メディアが守るべき一線を越えてはいないか。「表現の自由」の名の下にいかなる言論も許されるわけではない。他者の権利や異なる価値観への配慮は不可欠である。

 フランスの政治週刊紙が、5年前のテロ事件のきっかけとなったイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を再掲載し、賛否両論を呼んでいる。テロでは編集部がイスラム過激派に襲撃され、編集長や風刺画の作者らが殺害された。

 政治週刊紙は再掲載の理由について、事件の裁判が始まったのに合わせてテロに屈しない姿勢を示し、事件への理解を深めてもらうためだとの立場をとっている。

 風刺画は、ムハンマドの頭上に爆弾を載せるなど、イスラム教とテロを結びつけるような図柄が目立つ。偶像崇拝を禁じるイスラム教文化では、ムハンマドの人物画を描くことはまれで、風刺画を冒涜ぼうとくととらえる信者は多い。

 もちろん、テロはどんな理由であれ、正当化できず、表現の自由が脅かされてはならない。

 だが、言論機関は、記事が社会に及ぼす影響を考慮する責任を負っている。風刺画を再掲しなくても、議論に必要な材料は文章で提供できたのではないか。

 フランス国内の世論調査では、再掲への支持が約6割を占める一方、イスラム教徒は約7割が「誤りだった」と回答した。有力イスラム教組織の指導者はテロの誘発を警戒し、風刺画を「無視」するよう冷静な対応を呼びかけた。

 中東やアフリカからの移民の流入によって、フランスではイスラム教徒が増加し、人口の8%を占めているという。反イスラム感情が高まれば、異教徒の共存も社会の安定も進むまい。

 マクロン仏大統領は、「わが国には、信仰の自由とともに冒涜する自由がある」と強調し、政治週刊紙への批判を避けた。

 フランスには、共和主義勢力が長い年月をかけてカトリック教会の影響力を抑え込み、政教分離の原則を確立した歴史がある。この中でキリスト教への風刺を許容する文化が形成されたという。

 マクロン氏の発言はこうした伝統を踏まえているのだろうが、問題は、国内外のイスラム教徒の理解を得られるかどうかだ。

 57か国・地域が加盟するイスラム協力機構の人権委員会は風刺画に関する声明で、「恐ろしい表現と『冒涜の権利』を支持する国」に対し、深い遺憾の意を表明した。マクロン氏は、厳しい声にも耳を傾けねばならない。

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1468977 0 社説 2020/09/11 05:00:00 2020/09/11 05:00:00

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