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中国語教育強化 少数民族の抑圧は許されない

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 少数民族が独自の言語を使う権利は、国際規約で保障されている。国家の一体性を優先するあまり、民族同化を迫るような中国の教育政策は許されるものではない。

 中国北部・内モンゴル自治区でモンゴル語の授業が減り、標準中国語による教育が強化された。少数民族のモンゴル族向けの小中学校で、「国語」教科書が標準語版に変わり、「道徳」と「歴史」も順次切り替えられるという。

 自治区では、モンゴル族が人口の約2割を占めている。住民らが「民族文化の危機」を訴え、授業のボイコットや街頭デモなどの抗議行動に出たのは当然だ。

 これに対し、警察当局は抗議に関わった保護者らを次々に拘束している。デモ参加者の顔写真をネット上で公開し、出頭や情報提供を求めているという。

 少数民族による分離・独立運動への警戒から、新疆ウイグル、チベットの両自治区で、当局が統制と標準語教育を強めているのと同じ構図ではないか。

 中国には全人口の9割を占める漢族と55の少数民族がいる。中国政府は、標準語教育は少数民族の就業や知識習得、社会の調和に役立つと主張するが、相手の意向を無視した強制的な措置では説得力を欠くと言わざるを得ない。

 国際人権規約は、少数民族の文化や宗教、言語を「否定されない権利」と明記している。中国の憲法にも、「少数民族がそれぞれの言語、文字を使用し、発展させる自由」がうたわれている。

 それでも、習近平政権が標準語教育の普及を進めるのは、「中華民族」としての意識を高め、中国共産党の一党支配をさらに強固にする狙いからだろう。

 香港では、9月の新学期以降、高校の必修教科書から、民主主義の基本である「三権分立」や、民主化運動を武力弾圧した天安門事件など、中国共産党にとって都合の悪い項目が削除された。

 「一国二制度」に基づき、自由と民主主義が根付いている香港の歴史と文化を否定し、中国共産党の価値観を一方的に植え付けようとする試みである。若者が反政府活動に傾く土壌を排除しようという思惑があるのは明白だ。

 習政権は、強引な手法がかえって抗議運動の激化や情勢の不安定化を招いていることをどこまで認識しているのか。国内外の批判の声に耳を傾けねばなるまい。

 日本は、人権尊重の価値観を共有する国と連携し、中国に懸念を伝え続けていくことが重要だ。

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1505240 0 社説 2020/09/28 05:00:00 2020/09/28 05:00:00

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