介護を担う子供 過重な負担には支援が必要だ
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家族の介護を優先せざるを得ず、学校生活に支障が出る子供がいるという。実態を把握し、適切な支援につなげたい。
厚生労働省は、家族の世話を日常的に担っている子供たちの現状について、全国の高校などを対象とした調査を実施する方針だ。今年度中に結果をまとめるという。
介護を含め、子供が家庭内で役割を果たすことは、社会にとっても、子供の成長にとっても、価値のあるものだ。支え合いの大切さを学ぶ貴重な機会ともなろう。
しかし、負担が過度になれば、子供の将来に影響を及ぼしかねない。認知症となった祖父母や親の介護、幼いきょうだいの世話などに追われ、疲労から学校を休みがちになる人が目立っている。進学をあきらめる例もあるという。
その背景には、高齢化が進む中で、共働きの家庭が増え、大人だけでは十分なケアができなくなっているという事情があるようだ。一人親世帯で親が病気になると、子供の負担は一段と重くなる。
同様の課題に直面した英国は、介護を担う18歳未満の人を「ヤングケアラー」と法的に位置づけて調査を行い、支援している。
だが、日本では、そうした子供の人数やケアの内容などが詳しくわかっていない。厚労省は、文部科学省と緊密に連携し、できるだけ課題を明らかにしてほしい。
一部自治体や民間団体などの調査によると、悩みを抱えていても、家族のことを話したくないと考える子供もいる。どこに相談していいかわからず、孤立していたケースは少なくないという。
頻繁に宿題を忘れたり、授業時間に寝たりする子供の中には、家族の介護負担がその一因という場合があるかもしれない。教職員は、子供の相談に乗り、必要に応じて、福祉などの専門家と連携して対応を考えてもらいたい。
学校のほか、介護や医療、福祉などにかかわる大人が、子供たちの置かれた環境に目配りをすることが重要である。
埼玉県は今年3月、全国で初めての「県ケアラー支援条例」を制定した。18歳未満については特に「適切な教育機会」を確保するという基本理念を掲げ、今後、具体的な支援策をまとめるという。
高齢社会の進展を見据え、介護される側だけではなく、介護する人の負担軽減に着目して施策を展開する意義は大きい。
支援が必要な子供に対して、社会全体で手を差し伸べていく環境をつくりたい。