保護児童の将来 自立支援の充実が急がれる

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 虐待や貧困を理由に保護され、施設などで育った子が、自立後に孤立や経済困窮に悩むケースが目立っている。頼れる家族がいない若者を支える制度の拡充が急務だ。

 親元を離れ、児童養護施設や里親家庭などで暮らす子は全国に約4万5000人いる。児童福祉法に基づき、原則として18歳で自立が求められ、進学や就職を機に施設などを出る子が多い。

 厚生労働省は近く、過去5年間に施設や里親家庭を離れた15歳以上を対象にした実態調査を行う。転職や中退の有無のほか、自立の前後にどのような支援を受けたかや、現在の生活で困っていることなどについて尋ねるという。

 近年、施設出身者への自立支援の重要性が指摘されているが、当事者の声を幅広く聞くのは初めてだ。支援のニーズを把握するためにも、調査の意義は大きい。

 施設出身者の大学進学率は14%で、高卒者全体の50%超より大幅に低い。進学しても生活のためにアルバイトを掛け持ちせざるを得ず、体調を崩して中退する人が少なくない。就職した後、短期間に転職を繰り返すケースも多い。

 経済的な問題にとどまらず、困った時に頼れる大人が周囲におらず、孤立感を深めやすいことが背景にあるのだろう。虐待により心に深く傷を負い、対人関係がうまく築けない人もいる。

 どのような困難に直面しているのかを丁寧に聞き取り、支援の充実につなげてもらいたい。

 厚労省は、自立支援の担当職員を施設に配置する仕組みや、退所した若者に家賃や生活費を貸し付ける制度を設けている。支援の必要性が高い場合、22歳まで施設で生活できるようにもなった。

 ただ、自治体によって利用や実施の状況にはばらつきがある。制度を周知し、必要な人に支援が届くようにしなければならない。

 埼玉県は、民間アパートを借り上げて進学者に低額で提供し、社会福祉士が相談に乗っている。自立した人たちが気軽に立ち寄れる場所をつくり、一緒に食事をしたり、ビジネスマナーを学ぶイベントを開いたりしている。

 こうした先進例を自治体間で共有すべきだ。NPO団体などと連携し、心のよりどころになる場をできるだけ多く整備したい。

 施設にいる間に、金銭管理や自炊の仕方といった生活の基本を身につけさせることも大切だ。就職や進路など自らの将来を考える場を設けることも、巣立ちに向けた大事な訓練になるだろう。

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1600038 0 社説 2020/11/04 05:00:00 2020/11/04 05:00:00

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