福祉施設の労災 高齢職員の安全確保が急務だ

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 人手不足が深刻な介護など福祉の現場で、高齢の職員が負傷するケースが増えている。安全に働ける環境を整えるとともに、働き手の確保にも努めねばならない。

 厚生労働省によると、特別養護老人ホームや保育所などの社会福祉施設で昨年、労働災害で死傷した職員が1万人を超えた。前年比5・2%増で、10年前の2倍近い水準だ。全産業では1・3%減っており、増加が目立っている。

 死傷者の3人に1人は60歳以上だった。原因をみると、重い物を運ぶなど無理な動作で腰痛になったり、転倒や転落でけがをしたりしたケースが多かったという。

 高齢の就労者が増えていることに加え、安全への配慮が十分でない職場環境や過度な負担が背景にあるのではないか。今年は新型コロナウイルスへの対応に追われ、職員らは疲弊している。事故がさらに増えていないか心配だ。

 国は今春、高齢職員が安全に働ける職場作りの指針とチェックリストを公表した。暗い場所や段差をなくすほか、健康診断や体力テストを実施して、身体能力に見合った業務を割り振ることなど、100の点検項目を挙げている。

 高齢職員がけがをすれば回復に時間がかかり、働けなくなる場合もある。入所者が巻き込まれる事故も起きかねない。施設の運営者は設備や業務内容を精査し、早急に対策を講じてもらいたい。

 職員の高齢化が特に深刻なのが介護現場だ。国が昨年実施した調査では、30歳未満は8%足らずで、60歳以上が2割を超えていた。

 介護は、入浴や排泄はいせつの介助などの重労働が多い。入所者をベッドなどから移動させる作業を補助する介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用で、負担の軽減を図っている施設もある。

 国は、こうした設備を導入する事業者に補助金を出している。制度を周知して、普及を図ってほしい。技術開発を進める企業を資金面で後押しすることも大事だ。

 コロナ禍により、多くの職種で求人が減る中、介護職の有効求人倍率は3・8倍と高止まりしている。2025年には、34万人の介護人材が不足する見込みだ。

 介護職場では、職員の処遇が業務内容に見合っていないケースがある。長時間労働のイメージも根強い。全産業平均より月額8万円以上も低い賃金水準を含め、着実に改善することが必要である。

 外国人材に頼るばかりで、安全確保や待遇改善を怠っていては、人手不足の解消は望めまい。

無断転載・複製を禁じます
1605492 0 社説 2020/11/06 05:00:00 2020/11/06 05:00:00

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ