バイデン氏勝利 米国の安定と威信を取り戻せ

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◆国際協調体制の再建が急務だ◆

 トランプ政権の4年間で失われた米国の安定と威信を取り戻さねばならない。「自国第一」主義から国際協調路線への回帰も急務である。強い指導力が問われよう。

 米大統領選で、民主党のバイデン前副大統領が共和党のトランプ大統領を抑え、勝利を確実にした。来年1月20日に就任する。

 トランプ氏は、敗北を認めず、選挙で不正があったと主張している。その証拠は示していない。潔く結果を受け入れて、円滑な政権移行に協力すべきではないか。

◆コロナ対応が決め手に

 選挙の主要な争点は、トランプ氏を信任し、続投を認めるかどうかだった。新型コロナウイルスへの対応が、施政を評価する最大の基準となり、勝敗を左右したのは間違いない。

 トランプ氏は一貫してウイルスの危険性を軽視し、「事態は好転する」との楽観的な見方を根拠なく示し続けた。専門家の意見に耳を貸さず、経済活動の維持、再開に重点を置いた。感染防止との両立に腐心する様子は見られなかった。

 米国は世界最多の感染者と死者を記録している。トランプ氏は、中国や世界保健機関(WHO)の過失を非難してきたが、結果責任は免れ得ない。国民の命と生活に直結する問題で我流を押し通すのは、無理があったと言える。

 実業界出身の「アウトサイダー」として既存政治の打破を図る手法は、多くの弊害を招いた。宣伝と誇張に満ちたメッセージをひっきりなしに発信する「ツイッター政治」はその象徴だろう。

◆分断をどう修復するか

 大統領としての資質や品位を欠いた言動により、支持層と反対派の対立は一段と深まった。

 トランプ氏の独善的な政策決定プロセスが、官僚組織や議会の機能低下を招き、米国政治を劣化させたのは明白である。

 バイデン氏が勝ったのは、こうした手法への反発の受け皿となったからだろう。必ずしも自らの政策が幅広い支持を得たわけではないことは留意せねばなるまい。

 バイデン氏は勝利演説で、「大統領として、分断ではなく団結を目指す」と強調し、国民に協力を呼びかけた。だが、トランプ氏に票を投じた7000万人を超える有権者に融和のメッセージを浸透させるのは容易ではない。

 米国で社会の分断と閉塞へいそく感が強まった背景には、構造的な問題が横たわっている。グローバル経済や自由貿易、産業のIT化の進展で恩恵を受けたのは一部の分野に限られ、むしろ「格差が広がった」と感じている人は少なくない。

 工業地帯や農村の白人労働者らは、エリート中心の政治から見捨てられたという意識から、トランプ氏の岩盤支持層を形成した。均等な機会の下で、勤勉さで成功を勝ち取る「アメリカン・ドリーム」の価値観は薄れつつある。

 行き過ぎた格差を是正し、中間所得層の拡大を図ることが、分断修復への一歩となろう。穏健な中道・中流層を広げていく取り組みは、左右両極の偏った主張を排除し、政治と社会を安定させることにもつながるはずだ。

 外交では、米国主導の国際秩序の維持が課題となる。

 日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)などの同盟が持つ意義を、米国自身が再確認することが重要である。

◆同盟の結束を固めたい

 中国やロシアなど、強権政治で秩序の変更を図る勢力に対し、米国と同盟国が連携すべきだ、というバイデン氏の構想は理にかなっている。自由、民主主義、法の支配といった価値観を共有する国々の結束を固めていきたい。

 特に、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発への対処では日米連携を強める必要がある。

 一方、「米国は世界の警察官ではない」として、海外紛争への関与を減らそうとする傾向は、バイデン氏がかつて副大統領を務めたオバマ政権時代から続いている。同盟国に負担増を求める流れは、新政権でも変わらないだろう。

 日本などの同盟国が任務の役割を広げて、米軍の負担を実質的に軽減する努力が不可欠だ。

 コロナ禍の中、各国がワクチンの開発、配布などで協力し、世界経済の回復を目指すうえで、バイデン氏の国際協調路線の意義は大きい。WHOからの脱退撤回は、その手始めとなろう。

 地球温暖化対策のパリ協定への復帰も急いでもらいたい。中国にルール順守の圧力をかけるため、環太平洋経済連携協定(TPP)加盟も検討すべきではないか。

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1613969 0 社説 2020/11/10 05:00:00 2020/11/10 05:00:00

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