デジタル教科書 紙を基本に特性生かす工夫を

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 紙とデジタルは特性が異なり、それぞれに良さがある。子供が学ぶ教科書は紙を基本とし、デジタルは、学習効果を高めるための補助教材として活用すべきである。

 平井デジタル改革相が、小中学校で使う教科書を原則デジタル化すべきだと主張している。新型コロナウイルスの流行を受け、今年度末には子供たちに1人1台の情報端末を行き渡らせる方針だ。

 デジタル教科書は、2019年度から使えるようになった。法令上は「教材」に位置づけられ、紙の教科書との併用が認められている。紙と違って無償配布の対象ではないため、導入している小中高校などは1割に満たない。

 学校現場から、教科書のデジタル化を求める声はほとんど聞かれない。スマートフォンの長時間利用が問題視される最近の子供たちが、学校でも画面を見続けることになれば、むしろ不安を感じる教員や親が多いのではないか。

 デジタルの場合、通信環境の確保や故障時の対応、視力低下などの健康への影響といった懸念もある。萩生田文部科学相が「紙の良さも一定程度ある」として、デジタルへの全面移行に慎重な姿勢を見せているのは、当然である。

 デジタルは情報を素早く検索でき、音声や動画も活用できる。授業で上手に使えば、教科書をより深く理解する手助けになる。

 一方、熟読し、深く考えるには不向きだとの指摘がある。経済協力開発機構(OECD)の調査では、本を紙で読む生徒の方が、デジタル機器で読む生徒より「読解力」の得点が高いとの結果も出ている。教科書も同様であろう。

 読み、書き、考えるという言語活動には、紙に印刷された文章と向き合う機会が不可欠である。

 韓国や台湾では、学習効果に対する疑問や接続不良の多さなどから、デジタル教科書の全面的な導入には至っていない。豪州には、5年間使ってみたものの、「子供の集中力が欠ける」という理由で、使用をやめた学校もある。

 デジタル化の利点が判然としない中で、紙の撤廃まで持ち出すのは、飛躍した議論だと言わざるを得ない。効果や影響をしっかりと検証するのが先である。紙を基本に、デジタルは補完的な役割として、活用法を探るべきだ。

 菅首相は「デジタル化の推進」を改革の旗印に掲げている。行政の効率化は必要だが、あらゆる分野が「デジタル化ありき」ではなかろう。子供の将来にかかわる教育分野に拙速は許されない。

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1625321 0 社説 2020/11/14 05:00:00 2020/11/14 05:00:00

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