無形文化遺産 世界が称賛した伝統建築の技

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 日本古来の建築を守るため、かけがえのない技を継承してきた人々を励ます朗報である。

 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に、「伝統建築工匠こうしょうの技」を登録するよう、事前審査にあたった評価機関が勧告した。12月に正式決定される見通しだ。

 無形文化遺産は、世界の芸能や伝統工芸技術などを登録し、保護する制度だ。日本からは能や歌舞伎、和食、「山・ほこ・屋台行事」の祭礼などが登録されている。

 新たに登録勧告の出た「伝統建築工匠の技」は、木工や左官、装飾などに関する17件で構成されている。木や草、土といった自然素材を用いた建築は、定期的な修理や部材の交換が不可欠だ。17件はこうした役割を担っている。

 評価機関も、無形の技術と、有形の文化遺産である建造物との結びつきに光を当てるものだと称賛した。古来の経験や知恵を受け継ぎ、文化財としての建築に貢献してきた点で価値は大きい。

 奈良・法隆寺や兵庫・姫路城のような寺社・城郭の「屋根瓦ぶき(本瓦葺)」には、まだ使える古瓦を見極める眼力、新しい瓦を補いながら、優美な曲面に調和させる高度な技能が求められるという。

 必要な資材を確保する営みを17件に加えていることも特筆に値する。「檜皮葺ひわだぶき・こけら葺」のうち檜皮葺はヒノキの樹皮、「茅葺かやぶき」はススキやヨシを用いる。それらを集める「檜皮採取」や「茅採取」がなければ成り立たないからだ。

 京都・清水寺の本堂は檜皮葺であり、岐阜・白川郷の合掌造り集落は茅葺だ。技術や資材が途絶えると、世界文化遺産をはじめとする寺社、古民家が変質し、価値を失うことは明らかだろう。

 国はもともと17件を「選定保存技術」に選び、継承する14団体を認定しているが、当事者の努力だけでは、近代的な建築工法に押され、先細りになりかねない。

 伝統的な素材の生産・流通をどう持続させるか、知恵を絞る必要がある。安価な輸入漆に対し、文化庁が国宝などの修理に国産漆を使う方針を定めたことで、減産に歯止めがかかったという。

 何より、多くの団体が後継者育成に苦労しているとされる。文化財に関わる仕事の意義、やりがいが若者に知られていないのではないか。学校教育などでしっかり伝える工夫も検討に値しよう。

 無形遺産登録は、わかりやすく内外に価値を伝える好機だ。効果的な支援策を打ち出し、安定的な継承につなげてもらいたい。

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1636917 0 社説 2020/11/19 05:00:00 2020/11/19 05:00:00

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