ミャンマー情勢 実行力問われるスー・チー氏

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 ミャンマーの民主化を進め、国内の安定を実現するには、軍の政治への関与を弱める取り組みが不可欠である。アウン・サン・スー・チー氏の実行力が問われている。

 ミャンマー総選挙で、事実上の政権トップのスー・チー国家顧問が率いる与党・国民民主連盟(NLD)が、改選議席の8割超を獲得し、単独過半数を維持した。スー・チー氏の人気の高さが示されたが、前途は多難だ。

 NLDは、2015年の前回選挙で圧勝し、半世紀以上続いた軍中心の政治支配からの転換を果たした。しかし、軍事政権下で制定された憲法では、議席の4分の1が軍人に割り当てられ、軍は今も一定の影響力を保っている。

 与党が今回も、軍政の流れをくむ野党を抑えて勝利したのは、軍主導の政治に回帰する事態を国民が警戒したからではないか。

 スー・チー氏が公約に掲げた憲法改正や、軍と少数民族による内戦の終結は進展がなく、実績に乏しいとの批判は免れまい。

 政権に不満を抱く少数民族系の政党は、与党とたもとを分かち、議席を独自に獲得した。軍に対する過度の配慮への失望と受け止めるべきだろう。今後も成果を示せなければ、スー・チー氏の求心力が低下するのは確実だ。

 経済も伸び悩んでいる。インフラ整備の遅れや、官僚らの汚職体質が外国の投資を阻んでいる。かねて指摘されてきた課題を解決できない政権の責任は重い。

 軍政下で民主化運動を主導したスー・チー氏は、自宅軟禁などの弾圧を受けてきた。それにもかかわらず、現政権下でも政府批判が取り締まりの対象になっているという。スー・チー氏を支援する国際社会の期待を裏切るものだ。

 イスラム系住民ロヒンギャが迫害を受け、約70万人が難民化して隣国のバングラデシュに逃れた問題でも、スー・チー氏は存在感を示していない。欧米諸国は、「重大な人道危機」と認識し、批判を強めている。

 国民の9割が仏教徒のミャンマーでは、ロヒンギャへの差別感情が根強く、今回の選挙の争点にならなかった。だが、問題の放置は許されまい。スー・チー氏は、難民の帰還につながる国籍付与などの措置を急がねばならない。

 「自由で開かれたインド太平洋」を掲げる日本にとって、ミャンマーの安定は非常に重要だ。日本企業も多数進出している。国民融和と経済発展に寄与する支援を一段と強めていく必要がある。

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1644785 0 社説 2020/11/22 05:00:00 2020/11/22 05:00:00

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