医薬品談合事件 なれ合いが患者の負担増招く
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医薬品の入札談合は、患者の負担増につながりかねない悪質な行為だ。業界全体で深刻に受け止め、再発防止に努めなければならない。
全国57病院を運営する独立行政法人「地域医療機能推進機構」の医薬品発注を巡る談合事件で、東京地検特捜部が独占禁止法違反(不当な取引制限)で医薬品卸大手3社を起訴した。担当者7人も在宅起訴された。
最初に違反を自主申告したとみられる1社は起訴を見送られたが、談合に関わった4社の市場占有率は計8割に上っている。業界のトップ企業が、そろって不正に手を染めていた責任は重い。
機構は全国57病院で使う医薬品を一括発注していた。各社は2016年と18年の入札で、受注割合や入札価格を事前に決めていた。契約総額は計約1400億円で、1社あたり2~3割を受注できるように割り振っていたという。
予定価格に対する落札額の割合は、99%前後に達していたとされる。特捜部は、各社が契約額をつり上げ、利益を得ようとしたとみている。裁判では、談合の実態を明らかにしてもらいたい。
事件では、機構が一括で大量の医薬品を発注する方式が、不正の温床になったとも指摘されている。全国各地にある病院に医薬品を納入できる業者は、事実上大手4社に限られていたためだ。
機構の発注や予定価格の設定に甘さはなかったか。発注側のコスト意識の向上も求められよう。
医薬品の公定価格である薬価は、卸売業者が病院に納入する市場価格などに基づいて決まるという。談合で市場価格が高止まりすれば、薬価が引き下げられず、結果として患者が必要以上の医療費を支払わねばならなくなる。
3社を告発した公正取引委員会が、「保険料を負担している国民や、将来負担する人にも影響が及ぶ可能性があり、悪質だ」と厳しく指摘したのは当然である。
医薬品卸業界では、03年にも、10社が販売の値引き率を制限するカルテルを結んでいたとして、公取委に総額5億円を超える課徴金納付を命じられている。
業界では合併や統合が進み、当時の10社の多くは、今回の談合にかかわった4社に集約された。再編を進める過程で、
高齢化の進展に伴い、薬剤費を含む医療費は膨張を続けている。医薬品卸業界は、談合がその抑制を阻害しかねないということを、肝に銘じる必要がある。