イラン核合意 米国の復帰へ環境を整えよ
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イラン核合意には、イランの核兵器保有を抑止し、中東の緊張を和らげる意義がある。米国のバイデン次期政権が合意に復帰できるよう、関係国は外交努力を尽くすべきだ。
米英仏独中露の6か国とイランによる核合意は、2015年にオバマ米政権の主導で結ばれた。イランがウラン濃縮活動を大幅に縮小するのと引き換えに、米欧などはイランに対する原油禁輸や金融制裁を解除した。
イランの核施設を国際原子力機関(IAEA)の査察下に置き、イランが核兵器製造に着手しても完成まで1年以上を要する枠組みを作ったと評価されている。
問題が再燃したのは、トランプ米大統領が18年に核合意から離脱し、対イラン制裁を再発動してからだ。反発したイランは、合意に違反する濃縮活動に踏み切り、強硬策の応酬が続いている。
イランに「最大限の圧力」を加え、核開発をより厳しく制限する新たな合意を目指したトランプ氏の政策は、失敗に終わったと言わざるを得ない。
バイデン次期大統領は核合意に復帰する方針だが、道のりは険しい。この4年間で、米イラン関係が悪化の一途をたどった経緯に留意する必要があろう。
イランは制裁による経済難にあえぎ、対米強硬派が勢いを増した。国会は、ウラン濃縮の大幅拡大や査察受け入れの停止を政府に求める法律を成立させている。
先月下旬には、イランの核開発の中心的人物とされる科学者が暗殺された。核合意に反対するイスラエルが、米国の合意復帰を阻止するための
イランは「合意破り」の措置を是正する条件として、制裁解除に加え、経済的損失の「補償」まで求める可能性がある。来年6月の大統領選で、穏健派の現職に代わって強硬派が大統領になれば、事態の緊迫化は避けられない。
バイデン次期政権は、合意に復帰するにはイランの合意順守が先決、との立場だ。イスラエルやサウジアラビアなどの懸念にも配慮し、イランの弾道ミサイル開発や地域紛争への介入について幅広く議論していかねばなるまい。
英仏独などの核合意参加国は、米国の離脱に反対し、合意を維持する必要性を強調してきた。日本も同じ立場をとっている。
中東情勢の安定に向けて、こうした国々が連携し、米国とイランの間で仲介外交を展開することが重要である。