座間死刑判決 人命軽視の身勝手さを断じた
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若い被害者の苦悩につけこんだ卑劣な犯行である。9人殺害という結果の重大性を踏まえれば、極刑以外の結論はなかったと言えよう。
神奈川県座間市のアパートで2017年、15~26歳の男女9人が殺害された事件の裁判員裁判で、東京地裁立川支部が白石隆浩被告に死刑を言い渡した。
被害者は、SNS上で自殺願望を書き込んでいた。判決が「精神的に弱っている被害者を狙い、言葉巧みにだました。犯罪史上まれにみる悪質な犯行だ」と、厳しく指弾したのは当然だ。
強盗・強制性交殺人罪などに問われた被告は、初公判で起訴事実を認めた。犯行の動機は、金を奪い、女性に性的暴行を加えるためだったなどと説明した。事件を発覚させないため、殺害後には遺体を解体していたという。
2か月間で9人の命を奪ったことについて、被告は「快楽をずっと追い求めているような生活だった」「ばれなければいいと思った」などと語った。命の重さをあまりにも軽視していないか。
公判では、被告と弁護側の見解が食い違う場面も見られた。弁護側は、被害者が殺害を承諾していたと主張し、被告の刑事責任能力にも疑問を呈したが、判決はいずれも認めなかった。
被告は公判で、判決を受け入れて、控訴しない意向を示していた。弁護側は判決後、控訴の方向で検討する考えを明らかにした。
被告から、
遺族らの法廷での証言を通じて明らかになったのは、被害者が家族から愛され、周囲から必要とされる存在だったことだ。
被害者の中には、保健室の先生になるのが夢だった女子高生や、正社員になるために資格の取得を目指していた女性がいた。成人式で振り袖を着るのを楽しみにしていた別の女子高生の母親は、「家族の太陽だった」と語った。
生きづらさを抱える人たちを、被告のような犯罪者ではなく、悩みをきちんと受け止めてくれる相談窓口と結びつけることができるよう、国や自治体は、態勢の強化を急がなければならない。
ネット上で悩みを打ち明ける人に犯罪者が甘い言葉で近づき、性的暴行や強盗に及ぶといった事件も起きている。SNSを通じて見知らぬ人とつながる危険性を、改めて認識する必要がある。