来年度予算案 借金頼みの財政膨張は危うい
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感染症の拡大防止に万全を期しつつ、予算の膨張を抑えるために、効率的な使い道を精査しなければならない。
政府の2021年度予算案が決まった。一般会計の総額は106・6兆円となり、20年度当初予算から約4兆円増えて、過去最大を更新した。
新型コロナウイルスの流行に対応する予備費として、5兆円を計上したことで総額が増加したという。保健所や感染症研究の体制強化のための予算も盛り込んだ。
新規感染者や重症者の数は増え続けており、医療体制を支える費用は惜しむべきではない。
デジタル化や、温室効果ガスの排出を抑制する「脱炭素化」の促進も大切なテーマである。
菅内閣が掲げるデジタル庁創設に向け、関連省庁の情報システム整備に、省庁の枠を超えて一括で約3000億円を計上した。環境対策では、燃料としての水素活用の支援策などを拡充した。
企業の投資を促していく成長分野への支出は重要だ。
それ以外の予算を、いかに効率化するかが問われている。
歳出の3分の1を占めている医療や年金、介護などの社会保障費は35・8兆円と、20年度当初と比べ微増だった。
薬の公定価格(薬価)を多くの品目で引き下げて約1000億円削り、高齢化による自然増を3500億円に抑えたという。
だが、22年に団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、社会保障費の増加ペースは加速する見込みだ。高齢者に求める医療費の窓口負担引き上げは一定の結論を得た。給付と負担の適正化へ、さらに改革議論を続けてほしい。
公共事業費は横ばいの6・1兆円だったが、20年度3次補正に国土
頻発する水害への対応は欠かせないとしても、不要不急の事業を紛れ込ませることがあってはならない。国会審議を通じ、十分に点検してもらいたい。
20年度予算は、当初の約103兆円から3度の補正で約176兆円に膨らんだ。新規国債発行額は112・6兆円と、未曽有の規模である。税収の低迷が予想される21年度も、20年度当初より約3割多い43・6兆円とする計画だ。
感染拡大が長引けば、再び歳出圧力が強まりかねない。査定の甘い補正で、予算の増大を招く事態には注意が要る。政府は、借金頼みの歳出増が持続可能ではないことを、肝に銘じるべきだ。