消防団員の減少 地域防災の基盤固め急ぎたい
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地域の防災を支える消防団員の減少傾向に、歯止めがかからない。頻発する大規模災害に対処するためにも、人材確保に向けた環境の整備を急がなければならない。
消防団は、消防署と同様に市町村が運営し、全ての自治体に設置されている。
団員は定職を持つ傍ら、非常勤特別職の地方公務員として休日などに訓練を重ね、火事や災害時には呼び出しを受けて、消火や救助活動を行う。有事の際は、住民の避難誘導も担うことになる。
消火や救助は初動が大切だ。消防署員や他地区の応援が到着するまでの間、地元事情に精通する消防団員が果たす役割は大きい。
2018年の西日本豪雨では、広島、岡山、愛媛の3県で、延べ10万人以上の消防団員が行方不明者捜索などにあたったという。
1950年代に200万人を数えた全国の団員数は、90年代に100万人を割り込み、現在は約82万人まで減少している。
なり手も、かつては自営業者が多かったが、今は会社員が過半数を占め、家族が入団に反対する事例もあるという。
少子高齢化や地域社会のつながりの希薄化による影響を受けるのは、やむを得ない面もある。だが、このまま団員の減少と高齢化が進めば、地域の防災力が低下するのは避けられまい。
加入促進には、任務の危険さに見合った処遇改善が重要だ。
国は一般団員の報酬の目安を、年額3万6500円、1回当たりの出動手当7000円として、地方交付税に算入している。しかし、市町村が条例で定める報酬額は、財政事情などを理由に目安を下回っていることが多い。
消防団単位でまとめて報酬を受け取り、団員の懇親会などに転用されるケースもあるという。古い慣習とみて、違和感を覚える若手団員もいるのではないか。
総務省消防庁の有識者会議は、処遇改善策の検討を始めた。個人口座への振り込み徹底など時代に見合った仕組みにすべきだ。
大学生団員の活動実績を認証し、就職を支援する制度や、消防団活動に協力的な企業を税制で優遇する措置は一定の成果を上げている。こうした加入促進策を広げていくべきだ。女性や定住外国人の活用も有効だろう。
近年、災害時には多数のボランティアが被災地に集まるようになった。平時でも身近な場所に活躍の場があることを多くの人に周知し、団員の増加につなげたい。