コロナと寺社 人々の不安に寄り添う活動に
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初詣や葬儀・法事など伝統的な宗教行事に、新型コロナウイルスの影響が広がっている。多くの寺社は厳しい状況にあるが、人々の不安に寄り添う活動を続けてもらいたい。
神社本庁は初詣を前に、人の密集を避ける工夫、物品の消毒などを求めるガイドラインを示している。三が日に限らず、分散参拝を呼びかける寺社もある。
感染者の増加傾向は止まらず、大都市圏では、多くの鉄道が年越しの終夜運転を行わない。初詣はふだん足を運ばない層も集め、神仏との縁を感じてもらう機会となってきた。それだけに、寺社の苦境を象徴していると言えよう。
感染への懸念から、葬儀にも変化が及んでいる。主流は仏教式だが、会葬者を絞ったり、通夜や会食を取りやめたりするケースに加え、お盆やお彼岸といった法事の中止も増えているという。
葬儀や法事は伝統的に、死を受け止め、悲しみを癒やす営みとなってきた。近年は簡素化志向が強まっている。
地方では、子供たちを集め、礼儀作法などを教える寺子屋的な活動や、住民ぐるみの祭礼を続ける寺社も少なくない。そうした活動が停滞することは、地域の求心力を弱めかねない。
過疎化や生活慣習の変化で、かねて寺社の基盤は揺らいでいるとも指摘されてきた。そこにコロナ禍が重なった。社会や地域との絆を維持し、強めることでしか、活路は開けないのではないか。
その意味では、オンライン化の試みが広がっていることは注目される。宗派単位の大きな行事のライブ配信、ネットを通じた法話など、多岐にわたっている。
葬儀のオンライン中継などを始めた業者もある。むろん抵抗感を持つ向きも少なくあるまい。寺社としては、時流に合わせるところと、伝統を守るべきところを見極めることが必要だろう。
ネットに頼らずとも、日常的に檀家などに声をかけ、様々な悩みに耳を傾ける姿勢は大切だ。
全日本仏教会の調査によると、感染拡大後、
今もなお、心を支える役割が求められている表れだ。社会の動揺を鎮める宗教への期待感に応えるべき時でもあろう。