防衛予算 国民の理解深める努力続けよ
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日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。政府はその事実を丁寧に国民に説明し、防衛政策に対する理解を深めなければならない。
2021年度予算案の防衛費は、今年度当初比で0・5%増の5兆3422億円となった。9年連続での増額で、過去最大だ。
中国は、日本の防衛費の4倍近い予算を投じ、軍備を増強している。北朝鮮のミサイル開発は、依然として脅威である。着実に防衛力を高めることが肝要だ。
予算案では、宇宙、サイバー、電磁波といった新領域の能力強化や、
宇宙分野では、監視用の衛星の設計費などで計659億円を計上した。サイバー関連では、陸海空の共同部隊を新設するなど、301億円を投じる方針だ。
人工衛星や、サイバー空間のネットワークを通じた情報は、艦艇や戦闘機の運用に不可欠だ。防護力を高める狙いは理解できる。
ミサイル開発では、国産の地対艦ミサイルの射程を伸ばすため、335億円を計上した。
相手の射程圏外から発射できる「スタンド・オフ・ミサイル」として、5年後の配備を目指している。遠方から迎撃し、自衛隊員の安全を確保するという。
射程の長いミサイルは、敵基地攻撃能力の手段となり得る。だが、菅内閣はそうした活用方法を否定している。攻撃能力の保有に関する検討も、先送りした。
日本のミサイルで敵の拠点を攻撃するという選択肢を持つことは、抑止力の向上につながろう。新たな装備に予算を投じる以上、その目的を明確にする必要がある。政府は、攻撃能力の議論に背を向けてはならない。
最先端の装備の購入や、研究開発などに一定の予算を割くのはやむを得ないが、防衛費を際限なく増やすのは難しい。
防衛省は近年、補正予算で装備品を購入し続けている。20年度の第3次補正予算案では、哨戒機や潜水艦などの費用として3867億円を確保した。
政府は18年に決めた中期防衛力整備計画で、19年度から5年間の防衛費の総額を27兆4700億円と定めている。その枠内で、計画的に予算を計上すべきだ。
自衛隊は、災害時の救援や、新型コロナウイルスの感染者の治療などの任務もこなしている。国土の防衛を優先しつつ、様々な活動を通じ、自衛隊に対する世論の支持を広げていくことが大切だ。