デジタル庁 司令塔担い行政の質向上を
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デジタル化の遅れを挽回し、行政の質を向上させていくことが重要だ。官民の知恵を集め、機動的に対処できる組織にしなければならない。
菅内閣の重点政策であるデジタル改革の基本方針が決まった。司令塔となるデジタル庁を来年9月に新設することが柱だ。通常国会に関連法案を提出するという。
国と地方の情報システムは、それぞれが開発や運用を担ってきたため、相互の連携が難しい。新型コロナウイルスの感染拡大時に迅速に対応できず、給付金の支給や感染者の把握に手間取った。
デジタル化を加速させ、行政事務を効率的に行う基盤を整える必要がある。医療や防災など公的機関の取り組みを後押しし、緊急時の診療や情報提供など新たなサービスにつなげてもらいたい。民間企業の支援も課題となる。
デジタル庁は内閣直属の組織とし、首相がトップを務める。国のシステム統合やマイナンバーカードの普及など、七つの業務を担う。他の省庁への勧告権を持ち、関連予算も一括で計上する。
強い権限を付与するのは、省庁の縦割りを排する狙いだ。裁量や予算を守ろうとする各省庁の抵抗を退け、使いやすい仕組みを構築できるかどうかが問われる。
地方自治体のデジタル基盤を整える責任も担う。住民基本台帳や税金に関するシステムは、市町村ごとに機能や書式がばらばらだった。制度変更時には、改修の手間やコストがかさんだ。
今後は、国が標準的な仕様を定め、それに適合したシステムを導入するよう自治体に求める。インターネット上でデータを管理するクラウドに移行すれば、一体的な事務処理が可能となろう。
政府は、中央省庁だけで年間約8000億円に上っているシステム運用経費を、2025年度までに3割減らす目標を掲げている。開発や保守にかかる費用を圧縮し、着実に実現すべきだ。
課題は人材確保だ。総勢約500人の職員のうち、100人以上を民間から採用するという。
即戦力となる人材を登用し、民間の技術やノウハウを取り入れることが大切である。官民の人事交流を広げる観点からも、積極的な活用が期待される。特定企業との癒着を招かないよう、透明性を高めることも不可欠だ。
政府は改革の基本理念として、「人に優しいデジタル化」を掲げた。誰もが簡単に利用でき、国民が便利さを実感できるよう、丁寧な制度設計を心がけてほしい。