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 ◆英知と勇気で苦難乗り越える◆

 あけましておめでとう、という平凡な新年のあいさつを元気に交わせることがどれほど貴いか、改めて思い知る年明けである。

 風景は一変した。恒例の一般参賀は取りやめとなり、年頭の、天皇陛下の国民向けあいさつはビデオメッセージとなった。だれが1年前に、翌年の元日をこのような困難の中で迎えることになると、想像しただろうか。

 しかし、ピンチはチャンスという。新型コロナウイルスの感染拡大という大災厄が、医療体制の脆弱ぜいじゃく性や社会のゆがみなど、さまざまな問題点に気づかせてくれたことは幸いだったと思いたい。

 なすべき改革を断行し、苦難を乗り越えて、平和で健康な、そして活力ある社会を築き直す好機としなければならない。今年はその出発点となる。

 そのためには何よりもまず、コロナ禍の収束に全力をあげるべきである。経済との両立が必要なのは当然だが、感染の拡大を抑えないことには経済活動も順調に回転するはずがない。

 経済を破壊する要因はさまざまで、対策も一様ではない。地震や台風などの災害は、生産設備の損壊で供給に打撃を与えるから、インフラの復興が急務となる。バブル崩壊では金融システムの立て直しと需要の喚起が必要になる。

 ◆感染抑止が最優先課題

 感染症は人の接触から蔓延まんえんし、生産活動を妨げて、供給と需要を同時に阻害する。そうだとすれば、対策としてはコロナを収束させることが第一となる。

 なすべきことは、米国のシンクタンク(新経済思考研究所)の論文の、簡潔な表題の言葉に示されている。「経済を救うには、まず人を救え」

 遅すぎたとはいえ、菅首相が「Go To トラベル」事業を年末年始の期間、一時停止したことは評価してよかろう。

 もしこれを機にコロナが収束に向かい、オリンピック・パラリンピックが無事に開催されるようになれば、日本は世界に対して胸を張れるだろう。

 しかし、仮にそうしたベストシナリオが実現したとしても、感染症との戦いがそれで終わるわけではない。ワクチンが普及するには時間がかかるし、いつ感染が再拡大するかわからない。

 あるいはコロナとは別種の新たな疫病が、何年か後に襲来するかもしれない。実際、2010年には、厚生労働省の専門家会議が、新型インフルエンザの経験を踏まえて、保健所など専門機関や人員の体制強化を提言していた。

 それがほとんど忘れ去られていた結果が、今回のコロナ禍での大混乱である。そのてつを踏んではならない。医療体制の強化は、今ただちに着手すべき緊急課題であることを認識する必要がある。

 コロナ禍は日本だけの問題ではない。世界中が大混乱のさなかにある。人の往来、ワクチンの供給、医療対策など、国際社会全体が協力し合わなければ、この困難は乗り切れない。

 経済を再生するにも、サプライチェーン(供給網)や生産拠点の確保など、安定した国際協調体制がなければおぼつかない。ところが、貿易摩擦や安全保障問題をめぐる米中関係の険悪化によって、世界は緊張を高めている。

 経済のグローバル化は世界経済の発展を促したが、その恩恵を活用して力をつけた中国は、軍事力の拡大を加速させている。東シナ海、南シナ海など海洋進出にとどまらず、宇宙やサイバー空間にまで、勢力圏を広げつつある。

 ◆世界は変動期に入った

 トランプ政権下の米国は、「自国第一主義」を掲げて独自の核・通常戦力の強化を目指し、中国、ロシアなどとの対決姿勢を強めてきた。英国の欧州連合(EU)離脱、中東情勢の流動化も加わり、世界は大変動のただ中にある。

 地球温暖化など環境問題をめぐっては、国際社会の一致した努力が求められる一方で、環境規制の基準作りでは各国の対立と競争が繰り広げられてもいる。

 コロナ禍の混乱と国際秩序の動揺。協調と競争。四つの要素が絡み合いながら同時進行する、複雑な時代である。

 状況に適応するためには自己改革が必要だ。しかし同時に、変化に引きずられて平和と安全、自由と民主主義など、国家の基本に関わる大切な価値を失うことがあってはならない。

 何を変え、何を守り抜くか。物事を見極める英知と実行する勇気が、いま問われている。

 日本は、まずバイデン米新政権との間で日米同盟の強化を急ぐとともに、国際社会の課題解決の努力やルール作りに積極的に参加して、発言権を確保すべきだ。

 事態を傍観していたら、不利な条件を押し付けられ、国益を損なうことになりかねない。

 「脱ガソリン車」の開発、デジタル技術の活用などは、いったん立ち遅れると高い外国製品の購入や特許料の支払いを強いられることになる。国民の負担は増え、国内産業は空洞化する。

 状況に追随するのではなく、進んで難題に立ち向かうべきだろう。国内の態勢を整えたうえ、むしろ宇宙を資源争奪の場にしないことなど、新しい多国間協調の枠組み形成に向けて先導役を果たすのが、日本の役割ではないか。

 そのためにも、大事なのは国力である。基盤をなすのは経済力だ。日本の経済構造の立て直しに取り組まなければならない。コロナ禍が収束したとしても、それで日本経済の長年の病根がすっかり解消するわけではないからだ。

 ◆国力の充実を目指せ

 心配なのは成長の鈍化だ。企業の内部留保は475兆円、個人の金融資産は1901兆円と、空前のカネ余り状態だが、企業の投資も個人消費も低迷したままだ。先行きの不透明感に伴う不安がブレーキをかけているのだろう。

 成長戦略とともに、社会保障制度改革を断行して、社会の活力を取り戻さなければならない。

 また、国の借金残高は1000兆円を超えている。国と地方の長期債務残高が国内総生産(GDP)の2倍超という財政の危機的状況を放置することも許されない。

 経済発展の原動力となる技術は、国力の重要な要素だ。昨年末の小惑星探査機「はやぶさ2」の活躍は、日本の技術力の高さを実証した。ノーベル賞受賞の日本人科学者も多い。

 ◆人材の流出を防ごう

 それなのにITやデジタル技術では立ち遅れが指摘されている。一体なぜなのか。原因はいくつかあろうが、その一つに技術者や研究者を大切にしない企業風土があるのではないか。

 生産性向上や効率化を重視するあまり、人減らしで見かけの数値の改善を優先すると、優れた技術を持った人材は中国や韓国の企業にスカウトされてしまう。そんなケースがいくつもあった。

 今も、日本の大学や研究所ではポストが得られないからと、中国の研究所に高給で採用される若手研究者が多いといわれる。貴重な人材をみすみす流出させることが、日本の国力にとってどれほど大きな損失か。

 中小企業の生産性が低いと批判する新自由主義的な言説が目立つが、「はやぶさ2」を支えた技術者の多くが数十人規模の町工場の人たちだったことを、見落としてはならないだろう。

 技術も人間の営みである。人間力こそ国力の礎であることを思い起こしたい。

 デジタル化の問題でも、同様のことがいえる。国と地方の行政手続きなどは、システムをデジタル化して、国民の利便性を高める必要がある。しかし、教科書のデジタル化となると話は別だ。

 デジタル機器の動画や音声を副教材として活用するのは有効だろうが、紙の教科書をやめてデジタル・タブレットに切り替えるなど、本末転倒も甚だしい。

 書物を読み、文章を書くことで人間は知識や思考力を身につけ、人間として成長する。数学者の岡潔が言っている。「人の中心は情緒である」(春宵十話)。教育の基本を間違えてはならない。

 政治の安定も、国力の大事な要素である。経済力がいくら大きくても、指導者が国民から信頼されなければ、足元が脆弱であることを見透かされて、他国もその指導者を信頼してくれないだろう。

 為政者が国会答弁でウソをつく、疑問をもたれる政治決定についてかたくなに説明を拒み続ける、などの姿は、寒心に堪えない。

 ◆政治の信頼は国の礎だ

 激動する世界にあって、国家の平和と安全を確保していくには、日本の立場について国際社会の理解を勝ち取るための、対外発信力が不可欠だ。

 読売新聞と米ギャラップ社の日米共同世論調査によると、公共機関などの信頼度調査で、日本の国会は23%と、最下位だった。同じ最下位の米議会(33%)と比べても、情けない限りだ。

 与野党の指導者はそのことを肝に銘じて行動してほしい。国民もまた、政治に対してしっかりした意見を持たねばならない。今年は選挙の年でもある。

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1741373 0 社説 2021/01/01 05:00:00 2021/01/01 05:00:00

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