菅外交の課題 自由で開放的な秩序を目指せ
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転換期を迎えた国際社会において、自由で民主的な秩序をいかに構築していくか。それを主導するのが日本の役割だ。
菅首相は年頭の記者会見で、日米同盟を基軸としつつ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に取り組むと強調した。
経済成長著しいこの地域で、法の支配や航行の自由を確保することは、日本だけでなく、各国共通の利益である。安倍前首相が提唱した構想を、より具体化する施策を重層的に展開してほしい。
米国でバイデン政権が発足した後、首相は首脳会談に臨むことになる。バイデン氏は同盟重視の方針を掲げているものの、中国の覇権主義的な行動にどう対処するかについて、不透明な面もある。
首相は、米国が外交・軍事両面でアジアに関与することの大切さを説き、日米で足並みをそろえて東南アジア各国などへの働きかけを強化せねばならない。豪州やインドを含めた安全保障協力に加え、欧州との連携も進めたい。
新型コロナウイルス対策では、途上国でワクチンをどう普及させるかが国際社会の課題となっている。米国を引き入れ、日米欧主導の国際協調を実現すべきだ。
来年は、日中国交正常化50年を迎える。だが、中国公船が尖閣諸島周辺で領海侵入を続けるようでは、安定した関係は築けない。中国が懸案の解決に努力しなければ、習近平国家主席の国賓来日に世論の理解は得られなくなる。
米中の対立は、安全保障や貿易問題に加え、科学技術分野の覇権争いにも及んでいる。感染症の流行後、いち早く経済回復を実現した中国が、独善的な行動を活発化させるという見方もある。
中国に対し、国際規範を順守するよう、粘り強く求めていくことが日本の責務である。経済関係を保ちつつ、安保に関わる機微な技術を守る戦略的対応が必要だ。
夏の東京五輪・パラリンピックは、首脳外交の機会でもある。
北朝鮮が五輪に参加することになれば、高官が来日する可能性が高い。日本人拉致問題の解決に向けて、わずかなチャンスも逃さず、接点を探ってもらいたい。
韓国の文在寅大統領も、五輪を機に来日する見通しだ。韓国側が、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)の訴訟問題を前進させられれば、関係改善の契機となろう。
コロナ禍で対面外交が難しくなっている。首相は、様々なルートを使って、日本の主張をしっかりと発信し、理解を得るよう努めることが不可欠である。