成人の日 難局にひるまず前を向こう
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先行きの不透明な時代にどうやって前を向き、歩みを進めるべきか。大人の一員として、思いを巡らせてほしい。
成人の日のきょう、新成人124万人が新たな門出を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大で、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県には緊急事態宣言が発令されており、式典の中止を余儀なくされた自治体も多い。
帰省できず、晴れ着姿で旧交を温められない人がいる。試練とも言える現状に、気持ちは晴れないだろう。ただ、感染状況は深刻である。若い世代もつらいだろうが、我慢のしどころだ。
感染が落ち着くのを待って、改めて喜びを分かち合う機会を設けることはできないか。自治体は今一度、知恵を絞ってほしい。
今の20歳前後は、小さい頃からスマートフォンが身近にあり、SNSを使った情報発信にも積極的だ。環境問題や社会的な課題への関心も高いと言われる。
今後多くの経験を積む中で、いかに社会と関わり、役割を果たしていくか、考えてもらいたい。
昨夏の九州豪雨で被害を受けた熊本県球磨村では、1月4日の成人式がコロナ禍で延期された。
新成人代表であいさつする予定だった村役場職員の鎌畑美咲さんは、この半年間、被災地を駆け回りながら、「今、自分にできることは何か」と問い続けてきた。
自宅が被災し、くじけそうになったこともあるが、先輩職員や全国からの励ましに「復興の力になりたい」と奮い立ったという。
コロナ禍の中、他者のために懸命に力を尽くす人たちがいる。とりわけ、患者に向き合う医療従事者の姿は、生き方を考える糸口になるのではないか。
年末年始、大阪の施設でコロナ患者のケアにあたった28歳の看護師、貴志あかりさんは、「現場に足を踏み出してこそ、得られる責任感がある」と語っている。
駆け出しの頃、知識不足に悩み、重圧を感じた。それでも現場に立ち続け、「医療者としての自分を自覚した」と振り返っている。
成人の日の式典を中止した札幌市には、肺機能が弱く、感染リスクが高いという人から、新成人を激励するメッセージが届いた。
「皆さんが学校や家庭で、例年にない苦労を受け入れてくれているおかげで、守られる命や身体があります」と、自粛生活に感謝する言葉がつづられていた。
人は互いに支えられて生きている。きょうが、そんなことを実感できる一日になればいい。