投票所の減少 棄権を防ぐ手立てが大切だ
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過疎化や市町村合併の影響などで、選挙の時に設置される投票所の数が減少している。有権者の足が遠のき、投票率の低下を招くことがないよう手立てを尽くしてもらいたい。
7日に告示された岐阜、山形両県の知事選で、投票所の数は前回選挙や2019年参院選の時よりも少なくなっている。
4月に予定される秋田県知事選でも、湯沢市は61か所あった投票所を28に集約するという。横手市も市内63の投票所を57に再編する作業を進めている。
投票所の数に法的な定めはなく、市町村の判断に委ねられている。01年参院選で5万3439あった全国の投票所は、19年参院選では4万7044に減った。
人口減や高齢化で立会人らの確保が難しくなっている以上、投票所の減少はやむを得ない面がある。だが、投票所が遠くなったことで投票意欲のある有権者が棄権する事態は避けねばならない。今年は衆院選の年でもある。
自治体の支援が不可欠だ。投票所に行きづらい有権者に、タクシーやバスの利用券を配るなどして移動を後押しする必要がある。
期日前投票の積極的な活用も有効だろう。地域の公民館などに期間限定の投票所を設置したり、バスを移動投票所として使ったりする取り組みを広げたい。
選挙公報を迅速に配布し、期日前投票でも、有権者が政党や候補者の主張を見極めることができるようにしなければならない。
投票日当日の環境整備も大切である。選挙管理委員会が指定した投票所に限らず、市町村内の有権者なら誰でも投票できる「共通投票所」を設けた自治体もある。大型商業施設にあれば、買い物のついでに投票ができる。
岐阜県御嵩町は、今回の知事選で投票所を12から5に減らしたが、すべてを共通投票所とすることで利便性を維持するという。
共通投票所は、国政選では16年参院選から可能となったが、19年参院選で導入したのは13市町村45か所にとどまった。広がりを欠いているのは、不正防止などのシステム投資に二の足を踏む自治体が少なくないからだ。
米大統領選で注目された郵便投票は、日本では要介護度の最も高い「要介護5」の人などにしか認められていない。対象を拡大していくには、なりすまし投票などの防止策が課題となる。
政府は目玉政策とするデジタル化も活用し、システムや仕組みの整備を主導すべきではないか。