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海外の隠し財産 国際的な監視網を強化せよ

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 税金を滞納しながら、海外に財産を隠し持っているケースが後を絶たない。国際的な監視網を強化し、滞納者の逃げ得を許さない体制を整えなければならない。

 税金を滞納した個人や企業が海外に財産を隠している場合、日本の国税当局には、差し押さえる権限がない。財産の所在地である外国の税務当局に対して、差し押さえを要請する必要がある。

 この仕組みは「徴収共助」と呼ばれ、2013年に導入された。日本は現在、約70か国・地域と共助の条約を結んでいる。当初5年間は年間の要請件数が数件にとどまっていたが、19年度は29件、計37億円に増えたという。

 18年には、贈与税の納付を拒んだ男性が豪州に持っていた預金口座を、豪州当局に依頼して差し押さえてもらい、滞納分の8億円を全額回収した例もあった。

 税務調査で申告漏れや所得隠しを見つけて課税処分をしても、実際に税金を徴収できなければ意味がない。徴収分野での国際連携が軌道に乗り始めたことは、大きな前進と言えるだろう。

 徴収共助が急増した背景には、海外にある財産情報を入手しやすくなったことがある。

 経済協力開発機構(OECD)は、非加盟国を含む約100か国・地域が、口座情報を提供し合う仕組みを設けている。日本は18年から参加し、19年度は200万件近い情報を入手した。

 14年に導入された「国外財産調書」制度は、海外に5000万円超の資産があれば、日本の税務署への報告を義務付けている。情報を迅速に収集し、隠し財産を確実に洗い出してもらいたい。

 日本が共助を結んでいる国の中に、国内企業が多く進出する中国や東南アジア諸国などは含まれていない。課税と徴税の実効性を高めるためには、条約締結を粘り強く求めていくべきだ。

 自民、公明両党は来年度の税制改正大綱に、海外にある隠し資産への対策強化を盛り込んだ。差し押さえを免れる目的で、資産を海外に移した場合に適用する刑罰の対象範囲を拡大するという。

 デジタル化の進展で、国際的な資金移動は加速している。国際連携の網をかいくぐろうとする動きを封じ込めねばならない。

 近年、海外と取引のある法人や富裕層による申告漏れ金額は増えている。悪質な税逃れを見逃せば、国民は不公平感を抱く。適切な納税を促す意味でも、不当な財産隠しを許してはなるまい。

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1763091 0 社説 2021/01/12 05:00:00 2021/01/12 05:00:00

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