氷河期世代 就労支援に知恵を絞りたい
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非正規で働く就職氷河期世代がコロナ禍で苦境に立たされている。安定した雇用の場を増やすために、一層の努力が不可欠である。
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、政府は、氷河期世代への支援を強化する方針だ。当初の計画を前倒しし、自治体によるオンラインでの就職相談や講習などを進めるという。効果的な対策を取ってもらいたい。
政府は、2019年に策定した行動計画に基づき、20年度から3年間で650億円を上回る支援を行うことにしている。正社員を30万人増やす目標を掲げ、企業への助成や職業訓練の支援、公務員中途採用などに取り組むものだ。
氷河期世代は、バブル崩壊で企業が新卒採用を減らした1993年から2004年頃に学校の卒業期を迎えた人たちだ。今は30代半ばから50歳前後である。非正規雇用の人が多く、政府は支援対象を100万人程度とみている。
社会全体にとっても、働き盛りの世代が、希望通りに安定した仕事に就く意義は大きい。
計画策定当時は、中小企業の人手不足が深刻で、雇用環境は良好だった。だが、コロナ禍で状況は一変した。知恵を絞らなければ、目標達成はおぼつかない。
熊本県は、オンラインで簿記やITを学んだり、動画編集やデータ集計を体験したりする就職支援を始めた。感染防止と能力開発の両立を図る狙いがある。
埼玉県は、数十社が参加する合同説明会の際、企業や求職者に事前の研修を行っている。企業に対して、離職を防ぐ環境作りについて専門家が助言し、求職者には、面接の対応を指導するという。
研修が終了した後も、求人情報を提供し、個別の相談に応じている。19年度以来、約80人を正社員雇用につなげた。
氷河期世代の正規雇用が進まない背景には、正社員経験がないとスキルが乏しいとみられやすい事情がある。求職者が技能を向上させると同時に、企業はそれを正当に評価する姿勢が必要だ。
無職や引きこもり状態だった人に、社会参加を促すことも大切である。約180か所ある厚生労働省の地域若者サポートステーションは、コミュニケーション講座や職場体験の機会を設けている。
コロナ禍のもと、新卒者の就職環境も心配だ。雇用が不安定では、結婚して家庭を持つこともままならず、少子化の一因となろう。就職氷河期を再び招かぬよう、官民挙げて対策を講じたい。