北朝鮮党大会 軍事偏重をなぜ改めないのか
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核・ミサイル開発に固執する軍事偏重の政策によって、国際的な孤立と経済の低迷が深刻化しているのは明らかだ。
北朝鮮の指導者に求められるのは、他国を軍事力で脅す路線の根本的な変更である。
北朝鮮で朝鮮労働党の党大会が5年ぶりに開催された。党委員長の肩書を使っていた金正恩氏が、新たに党総書記に就任した。
総書記は、父親の金正日総書記や祖父の金日成主席も就いていたポストだ。最高指導者としての威信を高める狙いがあろう。
正日氏の死去以来、正恩氏は9年間にわたって国を率いている。今なお、肩書の復活を通じた権威付けを進めているのは、実績の乏しさの裏返しともいえる。
正恩氏は、前回の党大会で決定した「国家経済発展5か年戦略」について、ほぼすべての目標が達成に至らなかったことを認めた。スローガンに掲げている「人民生活の向上」にはほど遠い。
要因として、正恩氏は諸外国の経済制裁や自然災害などを挙げたが、失政の責任を逃れようとする
国連安全保障理事会が北朝鮮との交易を制限する決議を採択し、各国が履行しているのは、北朝鮮の核開発を国際社会全体の脅威とみなしているためだ。
制裁解除と経済再生の実現には核とミサイルの放棄しかないのに正恩氏は背を向け続けている。
金正恩体制は、北朝鮮の崩壊を望まない中国によって支えられている側面が大きい。北朝鮮経済はコロナ禍による中朝貿易の急減で打撃を受けた。中国は制裁履行を徹底し、核放棄を促すべきだ。
北朝鮮の新たな経済5か年計画は、外国に依存せず、自給自足を図るという。「自立経済」と表現しているが、その実態は、制裁下の国民にさらなる耐乏と労働強化を求めるだけではないか。
正恩氏は党大会で、軍事力増強の方針を改めて強調した。米国を「主敵」と位置づけ、米東海岸を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の命中率向上や、核弾頭の小型化を推進することを目標に掲げている。
20日に発足する米国のバイデン新政権に対しても、「核戦力」の整備を誇示し、揺さぶりをかけてくる可能性が高い。
日米韓3か国は、日米、米韓の同盟を軸に、抑止力と即応体制の維持、強化を図らねばならない。北朝鮮の要求に応じて縮小してきた米韓合同軍事演習は、正常化を進める必要があろう。