コロナと自殺増 きめ細かい支援で孤立を防げ
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長引く新型コロナウイルスの流行が、女性や子供の暮らしに深刻な影響を与えたためだろう。
厚生労働省によると、昨年の自殺者数は2万919人で、前年を750人上回った。リーマン・ショック後の2009年以来、11年ぶりの増加となる。速報値のため、更に増える可能性があるという。
男性の自殺者は前年より減った一方で、女性は14・5%増えた。働く女性の増加が目立っている。再度の緊急事態宣言で、女性の就業が多い飲食や宿泊業界が打撃を受けている。昨年、非正規で働く女性は月平均約50万人減った。
在宅勤務の広がりで、育児や介護の負担も増している。昨年の家庭内暴力の相談は前年より5割増えたという。困窮家庭や一人親家庭を官民で支え、事態の悪化を食い止めねばならない。
孤独感が理由とみられる自殺が増えた点は見過ごせない。感染を避けるため家に閉じこもり、孤立している高齢者は多い。地域の見守りを手厚くする必要がある。
児童生徒や大学生は昨年1~11月、前年比84人増の916人に上った。小中高生は過去最多の440人が自ら命を絶った。
親との不和や進路、学業不振を苦に自殺した子供が多いという。長引く休校で学校になじめず、授業についていけない。学校にも家庭にも居場所がない。そんな子供が増えているのではないか。
つらい、苦しいと感じた時に、周囲の大人に相談する方法を教える「SOSの出し方教育」に力を入れるべきだ。若者が相談しやすいように、SNSを活用した窓口の拡充を急いでもらいたい。
自殺対策に取り組むNPOの調査では、自殺した人は平均四つの悩みを抱えていた。借金や人間関係、病気などの問題が連鎖的に悪化し、精神的に追い詰められて死を選ぶケースが多いという。
自殺者の7割が、一度は医療機関や相談窓口を訪れていたという調査結果もある。相談内容からリスクの高い人を見極め、包括的な支援につなげることが重要だ。
求められる支援は年代や性別、地域によって異なる。国や自治体は自殺の背景を詳細に調査し、実態の把握に努めねばならない。
自治体やハローワークの担当者のほか、弁護士や精神科医らを交えたワンストップ型の相談会を開いている地域もある。相談を待つのではなく、苦境にある人には積極的に支援を届けてほしい。
家庭や職場、学校で周囲に目を配り、救える命を増やしたい。