衆院予算委員会 感染抑止への真摯な議論を
完了しました
新型コロナウイルス感染拡大の危機的状況から脱するためには、何が必要か。政府と与野党は、具体的な方策を
衆院予算委員会で質疑が始まった。菅首相は、コロナ対策について「この1年間に得られた知見や経験を踏まえ、対策を実効的なものとし、感染を抑えなければならない」と強調した。
そのうえで、新型インフルエンザ対策特別措置法や感染症法などの改正案について、早期成立への協力を呼びかけた。
特措法改正案は、知事が事業者に休業などを命令できるようにし、応じない場合は過料を科す内容である。感染症法改正案には、入院勧告に応じない感染者に懲役を科す規定が含まれている。
首相は、入院拒否に関連し、「医療機関から無断で抜け出してきた事案もある」と述べた。
だが、入院が必要なのに治療も受けず、感染を広げる患者が実際にどの程度いるのか。罰則は感染者の差別を招き、それを懸念して検査を避ける人が出かねない。
これらの罰則がコロナの感染抑止に不可欠だという根拠を、明確に説明することが重要だ。
そもそも現状は、感染しても病床に空きがないため入院できず、自宅療養中に亡くなる例が相次いでいる。十分な病床を確保する方策を議論するほうが先決だ。
野党は、罰則の見直しなどを要求した。首相は「感染の阻止に与野党はない」と述べ、党首会談に応じる考えを示した。今後、法案の修正が焦点となろう。
国民の不安を解消するため、与野党が建設的に協議し、国会で開かれた議論をすべきだ。
2020年度第3次補正予算案をめぐり、立憲民主党は、観光支援策「Go To トラベル」事業に対する1兆円の支出などを削除して組み替えるよう求めた。
3次補正予算案は、11都府県への緊急事態宣言の発令前に編成したものだ。政府は地域ごとの感染状況をよく見極め、「Go To」事業の再開時期を慎重に判断したうえで、無駄のないように予算を執行してほしい。
感染症対策が効果を上げるためには、政府の方針に対し、事業者はじめ国民一人一人が納得して行動することが大切だ。
首相の答弁は、結論を簡潔に述べる場面が多く、与党内からも、政策判断の理由に関する説明が不足しているという指摘がある。首相は、丁寧に言葉を尽くし、国民の理解を得なければならない。